人種と性倒錯のるつぼ

性倒錯の構造―フロイト/ラカンの分析理論

性倒錯の構造―フロイト/ラカンの分析理論

今夜も、ここ新宿と言う街の懐の深さを思い知らされた夜になりました!
REEX練習へ向かおうと、機材を乗せたカートを引っ張って、大ガード交差点までやってきたときのこと。
信号待ちをする私の目の前に、禿げたオッサンが立ちすくんでおりました。
頭頂部の進行が激しく(禿しく)、しかし脇の髪は伸ばしていて後ろ手に結わえている。約3センチほどのシッポが出来たポニーテール・スタイル。
おもむろに下へ目を向けた私の視界に、何やら違和感のある光景が。なんとこのオッサン、この寒空に半ズボンを穿いているではありませんか。
同時に黒いタイツも身につけ、かろうじて寒さ対策は出来ている状態か。いや、違う!
黒にグレーのストライプが入ったそれは、どう贔屓目にみても「女性用ハーフパンツ」じゃないですか!?
スラックス地のOL出勤スタイルってヤツ?
う〜む。オッサン、家出るときに何か間違っちゃったのかなぁ。
でも、もしかしたら、そう言うモノなのかも知れなかったり。
私のあずかり知らぬところで、そのような男性用の新製品が発売していた可能性も考えられるわけです。
つまり、省エネルック?節電ルック?って、この寒いのにこんな寒い格好したら、逆に暖房の温度上げちゃうから逆効果か。
おかしいな、おかしいな?と思った私は、オッサンの禿げ上がった頭と下半身とを、交互に見比べながら、しばらく後を付けるようにして歩いていたのです。
すると更にあることに気がつきました!
オッサンが来ている白いジャケット、これってよくよく見てみたら、なんと「女性用ショートジャケット」じゃないっすくゎあああ!!!
ここまで来たら決定的。このオッサンの着てる服は全て女物だったのです(靴だけはスニーカーだったが)。
すっかり困惑してしまった私でしたが、事態をポジティヴに考えようと、「きっと女性だけけれど、病気か何かで毛が薄くなっちゃったんだろう」とか、「ニューハーフか、そっち系のオネエがお店へ出勤する途中なのだろう」と解釈してみました。
ところがですねぇ、幅広い肩幅に節くれだった手の関節を見る限り、オッサンのそれは明らかに男性の骨格を示しているのでした。
と言うことで、「実は女性だった」説は否定されました。
それじゃあ、ニューハーフかオネエか?これを判断するのは、正直言って時期尚早と言わざるを得ない。
だって、何かを探すようにしてときどき辺りを見回す横顔にはまるで化粧っ気がなく、ましてや整形を加えたと思しき、不自然なくらいに整った目鼻立ちも見当たらないのですから!
つまり完膚なき「オッサン顔」である、と。
まあ、出勤前だから化粧してないってことが考えられますが、でも途中でお店の常連さんとかち合うこともありましょう。
そんなとき仮に化粧をしておらず、いかにも男臭い素顔を見られたとしたら、その常連さんはきっと幻滅してしまうことでしょう。
そもそも女性の服を着て出歩くなら、それなりに化粧を施すのが身だしなみ(身だしなみ以前に風紀が乱れている事態についてはこの際目をつぶることに)
いわゆる「女装」と言われるものとも少し違う、このオッサンから発せられる雰囲気は、「俺はたまたま女物の服が着たかったんだ!いまはユニセックスの時代だろ?男が女の服着て普通に街を歩いてたっていいじゃないか!」と言った感じ。
まあ、そうだよな。
確かに、別段誰に迷惑を掛けているわけでもなし。
全裸で歩いているのは違反かも知れませんが、「普通に市販」されている「普通の服」を着ているのだから、それが男物であるか女物であるかなんて「そんなの関係ねぇ!」と言う理屈も成り立つわけでして。
何はともあれ、女性用の服を普通に着こなしているオッサンに、それはそれは清清しい潔さを感じたワタクシであります。
それにしてもだ。そのオッサンがそんな格好でちゃんと街に溶け込んでいるのだから、この新宿の街はこれほどまでに優れて寛大な包容力を秘めているのだと、改めて感心してしまう。
と思ったら、オッサン。街行く人の列から離脱し、電気のさくらやへ買い物しに入ってっちゃったよ。
ス、スゲェ・・・。

@ちぇっそ@