メフィストの牢獄

メフィストの牢獄 (文春文庫)

メフィストの牢獄 (文春文庫)

中世より伝わる「秘宝」を巡って繰り返される略奪と暴力。現在キャンベル家に伝わるそれは一族に悲惨な死をもたらす。自らを秘数教徒と称するメフィストの手によって、次々と巻き起こる惨劇。捜査に乗り出したディクラーク警視正。カナダ騎馬警察の前に、また新たな挑戦状が突きつけられる!
デヴュー作「ヘッドハンター」より連綿と続く「スペシャルX」シリーズ第7作目。
考古学者の父を持ち、ストーンヘンジの謎に迫ろうとする「メフィスト」。その執着はある種の誇大妄想狂の体を為しており、天地開闢のシナリオを求め、「秘宝(ホード)」入手のためにはいかなる手段も辞さない狂信者である。何故なら「秘宝」こそが、ストーンヘンジの謎を解く鍵だと信じて疑わないから。
と言ったところが本作の背景。しかし一向に見つからない「秘宝」に、メフィストは遂に警察までをも利用しようと考えるのです。期せずして「事件に巻き込まれる」ことになったカナダ警察。
ここ数作でレギュラー出演しており、シリーズのファンにはすっかりお馴染みとなったニック・クレイヴン巡査長は誘拐され、暗殺者の魔の手によってあんなことやこんなことを!ああ、むごい。痛い、これは痛すぎる!ファンの期待を裏切らない残酷性は本作にも健在です。
しかしながら毎度のごときディテール過多の作風が、ここへ来て過度の破綻を示し始めており(はたまた単に私がついて行けなくなっただけなのか?)、完全に物語を分断させることになった脱線の数々によって、重度の消化不良を引き起こしている感がなきにしも。
とは言え、これがM・スレイドの持ち味なのだから始末が悪い。この手が好きな「オタク」的にはきっと楽しめる部分も多いのでしょうが、一般的に見て古代遺跡についての豊富な知識がないとちと辛いか。作品がいよいよもって読者に対し多大な要求を突きつけて来たようでもあります。
とは言え、内容の濃さでは過去最高(いや最悪に情報を詰めすぎか?)。読書の楽しみを享受するには充分過ぎるでしょうか。
いや待てよ。やっぱりスレイド・ファンでなければ楽しめなくなって来ているかも。この私ですら「スレイドよぉ、細か過ぎて分っかんねぇよ!」とか言いながら読んでましたから。
でも口ではそう言いながら、顔はニヤケてるんですがね(笑)

@ちぇっそ@