ヴォネガットについて、大いに語る
- 作者: カートヴォネガット,Kurt Vonnegut,金原瑞人
- 出版社/メーカー: NHK出版
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転倒した際に頭部を打ちつけたことによる脳への損傷が原因で、事故から数週間後の今年4月に亡くなったそう。
一番好きな作家だっただけにショック。
もっとも、1997年「タイムクエイク」発表後に断筆宣言をしたときから、「いつ死んでもおかしくないな」とは予想していましたが。
しかしまさかこんなに早く、こんな意外な形で、その生涯に幕が下ろされようとは。
奇妙にとぼけた味わいのあるSF作品で知られる作家ですが、その実、痛烈なる社会批判などが込められ、SFの範疇を軽く飛び超えて、現代アメリカ文学の礎を築く役割を果たした一人なのです。
それ故に、今回こうしてヴォネガット特集を組むことになったSFマガジンを眺めていると、ときどきこれがSF雑誌であることを忘れ、現代新潮辺りを読んでいる気分になってくるじゃないですか。
それだけ記事がSFっぽくないと。ヴォネガット好きで知られる、爆笑問題の太田光氏の原稿もあったりするのでね。
処女長編「プレイヤー・ピアノ」が、ジョージ・オーウェル作「一九八四年」に通じるディストピア小説であったことが由で、作家自身にとってありがた迷惑となる「SF作家」の称号をたまわることになります。
しかしその後も、あえてSF(もしくはそれに近い)作品を書き続けることによって、「さあ、私はキミらの言うSF作家なのだから、それならSFを書こうじゃないか!」と、自らSF作家を気取ることによって世論を皮肉ってみせる辺り、相当な偏屈者であることが伺えるでしょう。
ま、その辺りがファンを惹き付けて止まない魅力なんですけど。
私が初めてヴォネガットを知ったのは、忘れもしない、当時解散を表明した英国ハードロックバンドTHUNDERのライヴを追っかけするため、大阪へ赴く新幹線の車中で読む本を探していた折のこと。
「行き帰りでサクっと読めそうな軽い本」
そう思い、たまたま目に付いたのが「猫のゆりかご」と言うSF。
作者はカート・ヴォネガット。
はて。そういや、いつしかの「炎(伝説のメタル文芸誌)」で、風間賢二氏が同作者の「タイムクエイク」と言うのを紹介していたなぁ。
ポストモダン/幻想派の風間氏が奨めているのだから、これは何かしら読むべきものがあるのだろう。
そのように勘違いして(?)、この一冊に決めたと言う経緯があります。
ところが読み終わって、当時まだ小説を読み始めたばかりの私にとっては、あまりにぶっとんだ展開と奇抜な構成に面食らってしまい、正直何がなんだか分かりませんでした。
とは言え、当時熱意と忍耐がまだまだ充実していた若き自分は(いまではそんなものはとうに失せてしまったが!)、ここでヴォネガットと言う作家を逃さず、「分からないのなら、分かるまで読もう、ホトトギス!」と、次から次へとヴォネガットの作品を手にして行きました。
でもって気が付きゃ、ほとんどの作品を読破。いつしか熱烈な(?)ヴォネガット・ファンとして仕上がっていた次第。
スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,和田誠,伊藤典夫
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最初読んだときは難しかったのですが、二度目に読んだとき、もの凄く感動した覚えがあります。映画化された一作で、しかし映像作品の方は見た事がありません。
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,Jr. Vonnegut Kurt,浅倉久志
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- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,浅倉久志
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スラップスティック―または、もう孤独じゃない! (ハヤカワ文庫 SF 528)
- 作者: カート・ヴォネガット,浅倉久志
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- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,伊藤典夫
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- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,浅倉久志
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- 作者: カートヴォネガット,Kurt Vonnegut,浅倉久志
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私が持っているのは以上。まだ数冊ほど抜け落ちてますが、メインとなる長編に関しては、全て揃っておるわけです(紹介順は年代を無視してます。ヴォネガットのように、私も時間軸を無視してみた次第?いや、単にめんどくさかっただけか)
宮迫とほとちゃんの雨上り決死隊が司会を務める深夜番組で、今度「カート・ヴォネガット芸人」とかやればいいのに。
あ、これじゃ爆笑問題の太田氏の独壇場になっちゃうか。
いや、まだスチャダラパーもいるぞ!
実はまだまだ「隠れヴォネガー」がいるかも知れない。
それはともかく、こうしてヴォネガットについて思うところを、つらつらと書き連ねて来ました(「大いに語る」とタイトルに冠しているのだから、大いに語らねばウソになるのだ!)。
享年84歳。
なんとヴォネガットの多くの作品に登場し、作者自身の分身でもあったキャラクター、SF作家キルゴア・トラウトが作中で死亡する年齢が、この84歳なのです。
- 作者: キルゴア・トラウト,藤井かよ
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この奇妙な偶然が、ヴォネガットがこの世の最期に残した、最高のユーモアだった気がします。
あまりにあっけない気もしますが、作品の中で、
「(人生とは)そういうものだ!」
と言い続けた作家にとって、実に「らしい」幕切れであった感も。
晩年のインタヴューを読むと、この世界(政治も環境汚染もひっくるめて)の全てに悲観的だったようです。
「もう何をやっても無駄。もう地球を救うことなど出来ないのだから、それまでの間、人類に残された最良の手段とは『たのしむこと』だ!」
そう言い切っていた作家の言葉に、私自身返す言葉もありません。
全てが無気力の中で進行している。
「リセット」するなんて、そんな“てい”の良いことは言いますまい。
そろそろ、全部を終わりにしようか!
「私の人生、はい、それまでよ!」
もはや一発逆転もなく、破滅に向かってひた走る世界に我々を残し、「それじゃあ、よろしく!」と言ってこの世を去ったカート・ヴォネガット。
さて我々は、あとどのくらい笑って過ごすことが出来るのでしょうか。
まあ、せいぜい、最期が訪れるその時まで、私はこの世を楽しませてもらうことにしましょうか!
プーティウィッ?
@ちぇっそ@