虹の世界のサトコ

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「映像の魔術師」アレクサンドル・ブトゥシコがおくるファンタジー長編。
リムスキー・コルサコフがオペラとしても作曲した古代のロシア民話がベースとなっており、旅芸人サトコ(サトコと言う名だが外国名なので男性である)が故郷ノヴゴロドの町から貧乏人をなくしこの町を発展させようと、幸せの青い鳥を探しに世界を旅すると言う物語です。
どこかで聞いたような話ではありますが、本作に関して言えば、とにかく壮麗で圧倒的に美しい映像美をとことん楽しむことに尽きるでしょう。
壮大な映画セットの中で、古代の民族衣装を着た数百人のエキストラが歌い踊るようすは正に圧巻。自然の景色が見事に捕らえられており、我々が普段目にする夕日の美しさ、または嵐の前の不穏な雲行きの様子が、本物の感動そのままに迫ってきます。
この徹底したロケーションへのこだわりは、朱色に染まる夕闇のリリシズム、または立体的な雲の連なりなどを有し、景色それ自体が一大スペクタクルであると言えるでしょうか。
あくまでファンタジーなので、話そのものはかなり荒唐無稽です。しかし、人間の首を持つ不死鳥が登場したり、海の底で繰り広げられる魚介類の踊りなど、張りぼてやトリック撮影を使った演出がとても楽しいものとなっています。
サトコを演じた主演ストリャーロフも演技も堂々たるもの。自身に満ち溢れ、大胆にして情熱的なロシヤ青年を溌剌と演じています。
もともと農民出で、飾ることなくバイタリティに満ちた性格が、主人公サトコに通じるものがあり、特に演技をすることなく自然体で表現出来たとのこと。それはストリャーロフの息子が、特典のインタヴューで語っていたところによるもの。正に嘘偽りのない気持ちの良い演技が魅力です。
ブトゥシコの撮る作品は、ある意味ディズニーに近いものがあるでしょうか。しかしそこには、洗練されたエンターテインメントとは違う「生のロシア」が息づいています。もの凄いエネルギーと狂騒に満ちたツンドラのファンタジー。このフィルムそのものが文化遺産である言っても過言ではないでしょうね。

@ちぇっそ@