ちっちゃくても女は女

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店を閉めてから、「博多天神」でとんこつラーメンを食べる。
替え玉をし、味覚を変えるため、にんにくをスプーン一杯ぶち込む。
無臭にんにくでない強烈な芳香が鼻を突く。旨い。明日の接客のことなど眼中にない。
まっすぐ駅へは向かわず、近くのコンビニ前で一服する。
喫煙コーナーの後ろ、出入り口の横にはガチャポンが数台並んでいる。
私がキューバタバコに火を点けたそのとき、小さな3歳くらいの女の子が走り寄って来た。
「うわぁ。これいいなぁ!」
目を輝かせてガチャポンに見入っており、もの欲しさでいっぱいになった女の子は、人目などはばかることなくはしゃいでいる。
すると何を思ったか、ガチャポンから目を逸らさないまま、手だけ伸ばして「おいでおいで」を始めた。
「ねぇ。これ欲しいよぉ!」
親御さんの姿はどこにも見えない。
「“お兄さぁん”、これ欲しい!」
そばにいるのは私だけ。「俺か?この俺のことか!?」
一時躊躇した私だが、見ればおかっぱのなかなかに可愛らしい女の子。どうしてもと頼まれれば、ガチャポンくらい買ってやらないこともない。
これから先、15年後の美人さんだと思えば、これほど安い先行投資もないだろう。
さあ、お嬢ちゃん。キミの欲しいのはどれだい。お目当てのおもちゃが出てくるまで、お兄ちゃんが付き合ってあげるよ。
無邪気な女の子相手に、心の中でうそぶいてみる私。
ちょうどそんな場面へ、この子の母親が現れた。
「何してるの!?こっち来なさい!」
母親が子を呼び戻す。
目が合った私は、少し困惑気味に視線を返す。そんな母親も少々苦笑い。
「だってお母さんじゃ買ってくれないでしょ」
「当たり前じゃない。どうせすぐに飽きちゃうんだから、無駄使いしちゃだめなの」
親子の垣根を越え、女同士のやりとりがそこにはあった。
全く、してやられた。
まだこんな年端もゆかぬ少女に、私は翻弄されてしまったのだ。
小さくても、女は魔性を兼ね備えているものだなぁ。

@ちぇっそ@