スラッグス

スラッグス (ハヤカワ文庫NV―モダンホラー・セレクション)

スラッグス (ハヤカワ文庫NV―モダンホラー・セレクション)

衛生査察官ブラディは立ち退き執行に赴いた折、そこの家主であるロン・ベルの変わり果てた死体を見つけた。未だ生々しい肉片を残すものの、ほとんど白骨と化したその姿。一体ここで何が起こったのか!片方だけ残った眼窩がブラディをうつろに見つめていた。その頃、地下では人間の味を知ってしまった「ヤツラ」が増殖の一途を辿っていた。ぬらぬらした粘液を引きずりながら、「ヤツラ」はところ構わず侵入し、暖かい血肉を求めて人々に襲い掛かる!
ショーン・ハトスンによるモダンホラー長編。突然変異した「ナメクジ」が、街を恐怖に陥れるB級ホラー。
いやこれは素晴らしい!ぬめぬめしたナメクジの質感、それらが根城とする下水道から立ち込める腐臭。粘着質による触覚的な嫌悪感があり、読むだけで立ち込める悪臭に鼻を曲げること必死!これほど「汚物感漂う」小説と言うのも、そうざらにはないでしょう。
主人公ブラディが人食いナメクジを発見、そして退治すると言う大まかな設定があるほかは、各地で襲われる人たちが断片的に描かれるだけ。つまりはナメクジに襲われる人々の残酷描写がひたすら続くのです。この単純さが良い!
モダンホラーと言うには紙数がかなり少なめですが、無駄を一切省いた構成で一気に読ませます。B級でありながら人物描写に長けており、しかし簡潔な文章で読み手の注意を散漫にさせることはありません。実はかなり文章の上手い作家と思われます。
粘液系が苦手な人はとことんダメでしょう。ホントに気持ち悪い作品です(笑)これをニヤニヤ笑って読めるかどうか、ホラー好きのレベルを測るひとつのバロメーターになるかも知れません。
確かに、「動きの鈍いナメクジが人を襲えるのか?」と言った突っ込みはあるのですが、そこは作者の手腕によってほとんど気にせず読ませてしまいます。この辺りは本当に上手い。
既に絶版の本作ですが、ホラー好きは古本屋で見かけたら是非手にとってみて下さい。かなりお勧めです、ゲテモノ好きには(笑)
映画化もされており、映像の方も、これもまたかなり気持ち悪いと評判のようです(笑)

@ちぇっそ@