宇宙嵐のかなた

宇宙嵐のかなた (ハヤカワ文庫SF)

宇宙嵐のかなた (ハヤカワ文庫SF)

地球船スタークラスター号は大マゼラン星雲の中に、「五十の太陽」と呼ばれる惑星を発見する。そこはかつて地球帝国の支配から逃れた人類が建設した殖民惑星である。地球帝国は独立国家を認めないと言う方針に従い、「五十の太陽」に属する諸惑星に対し平和的外交を申し出る。しかし帰属をよしとしない彼らは、スタークラスター号への反撃を画策するのであった。
A・E・ヴァン・ヴォクトによるSF長編。1959年発表され1970年に翻訳されたものを、2006年に訳も新たに新装されたものです。
訳が新しくなったことで大分イメージが先鋭化されたでしょうか。もっとも最初の訳で読んだことはないのですが、一読して現在のSFと遜色のないような感じがしました。50万画素から1000万画素になったみたいな。
もっともそれは作品の内容自体が時代に先んじていたからであり、このように現代の用語に置き換えても耐えられるだけのポテンシャルを秘めていたことに他ならないでしょう。そう考えると、作者の想像力の恐ろしいまでの先進性に驚かされるわけです。
しかしこれだけ先鋭的なイメージがあり、突拍子もないアイデアを満載した科学小説であるにも関わらず、ラストの懐メロっぽい感じが少々腰砕け。しかしここに、50年代SFの良心が残されていると思えば、不思議と心和むところでありましょうか!(笑)
個人的には、先鋭化されたイメージが少しシュール過ぎて理解できないところもありましたが、ゲーム世代の方なら意外とすんなり読めるかも。

@ちぇっそ@