ベルヴィル・ランデブー

ベルヴィル・ランデブー [DVD]

ベルヴィル・ランデブー [DVD]

老婆と暮らす内気な少年。彼はお婆ちゃんに買ってもらった三輪車に大はしゃぎ。やがて彼は大きくなり、お婆ちゃんの指導の下、自転車のトレーニングに明け暮れる。そして遂に迎えたレースの日。彼は世界最高峰の自転車レース、「ツール・ド・フランス」に出走していた。ところが競技の真っ只中、彼は謎のマフィアに連れ去られてしまう。最愛の孫を追って辿り着いた「ベルヴィル」の町で、お婆ちゃんと愛犬ブルーノは大冒険を繰り広げる。
フランスの新進アニメーター、シルヴァン・ショメによる長編アニメーション。各種映画賞を受賞しており、現在大変注目度の高い監督です。
前評判は聞いていたのですが、実際見たところ、私が予想していたものとは若干赴きが違いました。もっとノスタルジックで牧歌的な寓話などを期待していたのですが、その中身には、モダンな映像表現とハッスルお婆ちゃんの冒険活劇と言った要素も含まれているものでした。
手書きセルにCGなども絡め、極端にデフォルメされたキャラクターたちを、更に強調するかの如く歪めた画面。この映像を歪める手法と言うのは、ソクーロフが実写でよく使う手です。また非現実的なまでにデフォルメされた登場人物たちは、ノルシュテインロシア革命を題に取った、「25日・最初の日」で登場させたキャラクターを思わせるものがあります。
言ってみれば、ロシア・アヴァンギャルドからの影響を感じさせるものですが、実際のところ、シュメ監督がどれほどロシア芸術からの洗礼を受けているかは分かりません。ただインタヴューなどから、どうやらフランスの漫画家から多大なインスピレーションを受けている模様。
監督が影響を受けた漫画家たちが、何らかの形でロシア・アヴァンギャルドと関わりを持っていたとしても不思議ではありませんね。
馬鹿馬鹿しいまでのユーモアが炸裂する場面も多く、しかしさすがにフランス的なエスプリが利いており、ディズニーのような健全なアニメとは明らかに別種の、グロくてブラックなセンスに「ニヤリ」と笑いのツボを押されるわけです。
個人的には、あまりに予想と違いすぎて面食らった部分があり、現時点では手放しで「おもしろかった」と言えないのが歯がゆいところですが、見た事のない映像に「ギョッ!」としたことは確か。そう言った意味で、本作の衝撃度はかなりのものがありました。
音楽が素晴らしいのも特筆すべき点で、異形のキャラクターたちと相俟って、作品を楽しくする重要な要素を占めていました。現代アニメの進化系として一石を投じることに成功した、画期的な作品と言えるでしょう。

@ちぇっそ@