ソドムの市

パゾリーニ・コレクション ソドムの市 (オリジナル全長版) [DVD]

パゾリーニ・コレクション ソドムの市 (オリジナル全長版) [DVD]

時は第二次大戦。大統領や司教で構成された4人の幹部。彼らはオーディションで選んだ男女を屋敷に幽閉する。そこでは毎夜、語り部たちが淫乱で悪趣味な物語を披露し、興奮の高まりが最高潮に達したそのとき、4人の幹部らによって残虐で放蕩な行為が繰り返されるのであった。
イタリアが生んだ奇才ピエル・パオロ・バゾリーニによる、公開当時センセーショナルを巻き起こした問題作。原作はマルキ・ド・サドの「ソドム百二十日」。これを第二次大戦の頃に置き換えて繰り広げる、血も涙もない残虐博覧会であります。
率直な感想を言えば、個人的に抱いていた原作のイメージとは多少違う印象を受けました。特に悪趣味を披露する語り部たち。原作では醜怪極まる、化け物のような夫人たちだったような気がしたのですが、映画に登場するのは見事に着飾ったゴージャスな夫人たちだったのです。
確かにキャラこそ立っていましたが、もっと凄いの(汚いの)を期待していた私にとっては少々物足りず。この語り部こそが作品の要だと思っていただけに、個人的には至極残念。
原作ではオーディションによって集められた美男美女が幽閉され、「さあこれから宴が始まるぞ!」となる直前までが描かれていました。映画自体は、正に狂乱の宴そのものを中心にした物語となっています。
エログロや残酷描写に関して1975年の公開と言うこともあり、近年のホラーやスプラッター作品に慣れ親しんだ向きには、さほどインパクトを与えるものではないでしょう。しかしそれらを差し置いても、原作で感じた残酷性にも遠く及んでいないと言うのが、個人的な感想でしょうか。イマジネーションと言った点で、想像力を喚起させる力がいまひとつ弱かったような。
実は原作には、執拗な悪趣味に対する様々なヒントが示されているのですが、もしかしたら監督自身の趣味が先行するあまり、その辺を深く読み解くことが出来なかったと言うことがあったのかも知れません。その辺りが少し歯がゆいのです。
第二次大戦が舞台となっているのは、当然そこにファシズムのメタファーが存在することを示すものですが、そこら辺についてはなんとなくですが、あまり深い関わりはないような気がします。基本的には、単にグロイ映像を撮ることが目的だったのではないでしょうか。
ラストはなんだかぶつ切りで、全体を通してみても果たして映画として成功しているかは疑わしいと感じましたが、実はバゾリーニは初見だったので、私が見慣れてないだけだったのかも。
珍しく辛口になってしまいましたが、原作を読んでの期待感があったため、映画の出来に納得が行かなかっただけかも知れません。原作は読まずに映画を観るか、もしくは原作だけ読んでみて下さい(笑)原作は本当に悪逆非道ですから。

@ちぇっそ@