スパイナル・タップ

非常に今更感が強いのですが、今日スパイナル・タップを見ました。
架空のヘヴィメタルバンドのドキュメントと言う体裁を取っている本作。相当に高尚ぶって好意的な解釈をするとしたら、SF古典の傑作「ソラリス」をものした事で知られる、スタニスワフ・レムによる架空の書物の解説「完全なる真空」のようでもあり、またはミロラド・パヴィチが著した、架空の古代都市で発行された百科辞典の第3版「ハザール事典」に通じるものがあり(ちなみに私が持っているのは“女性版”。“男性版”は17行だけ内容が違うのです)、はたまた“SF作家ヒトラー”が創作したとの触れ込みで話題を呼んだ、ノーマン・スピンラッド作「鉄の夢」のような、“架空の入れ子構造”を成すポストモダン的なトリックが仕掛けられた、エンターテインメント溢れる実験映画であると仮定出来るものです。
とここで、「そんなことあるわけない!」と思ったアナタは正解!ここにあるのは、バンドの実態と音楽業界の裏側を風刺した、下世話なギャグとシニカルな笑いがあるだけなのです。
ダメなマネージャーによってマーケティングは失敗するわ、メンバーの彼女がしゃしゃり出て、バンドに入れ知恵を吹き込むわで、遂にレコードの売れ行きは落ち込みバンドは失速する。そしてメンバーの脱退。この絵に描いたようなバンドヒストリーが、抱腹絶倒の喜劇となって展開するわけです。
しかしまあ、いかにもミュージシャン然とした出演者の演技が上手くて、「この人たち、ほんと“天然”だなぁ」と思わせる辺り、本物のミュージシャンの危さを演出していて最高(笑)
全編これほぼ、徹頭徹尾くだらないギャグのオンパレード。相当に緩くてヌルい作品ですが、これ一本で押し通してくれる潔さが清々しい!こんな風に、全く頭を使わない映画もたまには観た方が良いですよ。
ああ、おもしろかった。お気に入りに、追加です!

@ちぇっそ@