新宿偉人伝

新宿でたそがれて〜

地下鉄を出て、お店へ向かおうと西口を進んでいたときのことです。
反対側から見知った人物が、私のいる方へ向かって歩いてきます。
別に知人でも友人でもないのですが、昨年からよくすれ違っている、非常に特徴的な個性を持った男性。
とある有名人によく似ているのです。そこで私は、彼のことを勝手にこう名づけておりました。
「長州小々力」
プロレスラーの長州本人に似ているわけではないが、確かに「長州小力」には似ている。
長州に似ている(いや似てない)長州小力に似ているから、「長州小々力」という図式。
髪の毛の長さ、生え際。ゆったりとした衣服の下に隠されている、下っ腹の膨らみ。そして大判なりんかくに不釣合いな、あのつぶらな「ひ・と・み!」
どこを取っても、小力そのもの。最初見たとき、本当に本人かと思ったほどです。
今年もこうして、変わらず出会うことができた。
一富士、二鷹、三茄子。ところ変われば、「一力、二小力、三小々力!」
こいつは春から縁起がいいや!
ってなもんで、今年の初長州小々力でした。
そして今度はお店を閉めたあと。
いつもの帰り道を、新宿駅へと向かっていたときのこと。
前方からはまたしても、見知った人物が現れたではありませんか!
それは、ここ西新宿近辺でよく見かけるホームレスのおっさんです。
ダウンのベストを着ていたりと、ルンペンにしてはいくらか小奇麗な方なのですが、その行動様式や目付きの異様さを見れば、それが“あちらにイっちゃってる”人であることは一目瞭然。
こんな危なそうなおっさんが、近頃殺人事件などあった夜の街を歩いていようと、どこのチンピラでもとうていその歯牙にもかけることはないでしょう。
しかし今夜の彼が発散する、殺気にも似たオーラには、例え地獄の閻魔様でも思わず目をそむけてしまうほどの迫力がありました。
「ぶフォッ!?キ、”キティちゃんのぬいぐるみ”着てるゥ〜!?」
そうなのです。何やら真っ白な影が近づいて来たので、寒さにうつむいていた首を上げてみれば、そこには、
「キティちゃんの上下つなぎ」
を着た、例のルンペンが歩いていたと言う有様でした。
なまじ普段を知っているだけに、「うわぁ〜」としか声が出ない。
一体どうしちゃったの、おじさんっ!?
今年の衝撃映像第一弾でした。
しかしまあ、考えようによっちゃあ、
「随分と“暖かそうな着物”見つけたねぇ」
と思わず、安堵のため息が口をついて出ました。
これで私も安心して、この冬が越せるというもの。
やっぱり、新宿て凄いな!
私も彼らに負けないくらい、名物の見世物にならなくてはいかん!
そう思って、新年の所信を新たにした次第でした。

@ちぇっそ@