ソドム百二十日

ソドム百二十日 (河出文庫)

ソドム百二十日 (河出文庫)

(↑こんな有名作、何故画像がない?)
世に名だたる悪徳文学の嚆矢、マルキ・ド・サドの代表作。タイトル作の他、「悲惨物語」「ゾロエと2人の侍女」の2編を収録してあります。
「ソドム百二十日」とは、ありあまる金を持った4人の悪党が、各地から集められた美しい少年少女たちと共に、森の奥深くの城館に立て篭もり、120日間に渡る奇怪な饗宴を繰り広げると言ったお話。
本編はその序章となる、宴が始まらんとする直前までが描かれています。噂には聞くものの、創作されてから既に数世紀が過ぎた現代において、そのインパクトはどれほど残されているのだろうか。
「当時において」と言うエクスキューズを念頭に置いて読み始めた私でしたが、一読、「なるほど、これは凄い!」と驚きました(笑)単なるフェチなどと言った次元ではなく、4人の主役たちの行いと言ったら、それは紛れもない犯罪の巣窟であります。
全編ほぼ「人物紹介」に終始しているのですが、たったそれだけのことなのに「ここまで酷い人間は見た事ない!」と思えるほど、獣以下の愚行の数々に、時として私ですら辟易してしまう始末。
エログロを嗜好する方は是非とも読んでください。これを読まないと、ほんと語れませんよ。インパクトが薄れるどころか、強烈な衝撃を受けました。
もっとも裏を返せば、現代がいかに無菌状態で過保護になっているかが分かろうかと言うもの。これを読んで犯罪に走ってしまう連中が出ることは請け合いででしょうが(笑)、一億総検閲官ばかりのこの世界では、斬新でおもしろい芸術や文学など、何も生まれやしませんって!とまあ、とにかくそれほどまでに“念”のこもった悪徳の書であると言うことです。あな恐ろしい!
しかし、よくも発禁にならないのが不思議ですね。
「悲惨物語」は妻に束縛されていると思い込んでいる夫が、その復讐のために自分の娘を幼少より洗脳し、近親相姦に陥れると言ったお話。こちらに関してはさすがに古臭い感は否めず、ぐちゃどろになった親子の三角関係が、昼の連ドラのように思えてしまいました。
もっとも「ソドム〜」のように、更なるグチャドロを期待した私にとって物足りなかっただけかも知れません。題材は非常に興味深く、サド研究には欠かすことの出来ない一編となっているそうです。
「ゾロエと2人の侍女」は正式にはサドの作品ではなく、サドの作風を真似て別の作者が書いたのだそう。当時フランスの世相を諷刺した作品で、その時代の文化がよく描かれていると言った点で、編者である澁澤龍彦が寄せたものです。個人的にはこちらの方が読めたのですが、どっちにしろやはりメロドラマの粋を出ない普通作と言ったところでしょうか。

@ちぇっそ@