女帝エカテリーナ

女帝エカテリーナ 上 改版 中公文庫 B 17-3 BIBLIO

女帝エカテリーナ 上 改版 中公文庫 B 17-3 BIBLIO

しがないドイツの貧乏貴族から、ロシアの王朝へ嫁ぐことになったゾフィーはまだ14歳。ロシア名エカテリーナの称号を得て、やがて「女帝」と呼ばれることとなる、波乱に満ちたドラマチックな人生を生きた女の生涯を描く。
史実に基づくエピソードをふんだんに盛り込んだ、アンリ・トロワイヤによる歴史小説です。
あくまでフィクションであるわけですが、エカテリーナの治世、その入り組んだ愛人関係がつぶさにまとめられていて、ロシアの歴史を知る上でも大変参考になる作品でした。当然と言いましょうか、ドラマチックそのものだったエカテリーナの人生は、それだけで物語となり、読み応えのある大河小説として堪能出来るものでした。
愛人オルローフの強力を得て、自分の夫であるロシア皇帝ピョートルに対しクーデターを起こしたエカテリーナ。本来なら後を引き継ぐはずの息子パーヴェルを差し置いて、彼女は自ら帝位に就くのです。それから、またしても別の愛人であるポニャトフスキをして、彼をポーランドの王位に就け、自分の都合の良いようにこの国を利用する。
そして生涯最大のパートナーとなるポチョムキンとの大恋愛。恋が冷めたあとも2人は互いになくてはならない存在であり、差し詰めポチョムキンは、エカテリーナにとって最良の参謀であったと言えるでしょう。
波乱万丈ではありましたが、豪快且つ無限の包容力を備えたエカテリーナは、ドイツ人としてこの世に生を受けながら、広大なロシアの大地そのものとなり、ロシアの母以外の何ものでもない性質を備えることに成功した、生きながらにしてロシア人へと生まれ変わった女性であったわけです。
その権力によって世間を振り回すこともあれば、ロシアの近代化に多大なる貢献もしている。まるで矛盾の塊のようなエカテリーナの振る舞いについて、良いか悪いかの判断はいちがいに付けられないものですが、どこか憎めないところがあると思えるのは、これこそが彼女をして“ロシア的”たらしめている要素であると言えないでしょうか。
「理屈では動かないロシア人」この全くもって精神的な部分さえも、エカテリーナが自らの血肉として消化していた証しでありましょう。
実際の彼女はさほど美人ではなかったそうです。しかし数多くの愛人をとっかえひっかえした事実は、世紀を越えて尚、彼女を知ろうとする者を惹き付けて止まない魅力が、エカテリーナその人に備わっていたからなのでしょうね!

@ちぇっそ@