ざくろの色

ざくろの色 [DVD]

ざくろの色 [DVD]

今日は「没後20年タルコフスキー特集+パラジャーノフ作品」が上映されている、吉祥寺はバウスシアターまで行ってきました!見たのはパラジャーノフ監督作の「ざくろの色」。
タルコ全作品とパラジャーノフの他の上映作品は既に見たことがあるので、今回の特集上映で見ておきたかったのはこの作品のみ。映画通の間では有名なアート系作品なのですが、何故かいままで予定が合わず、今頃になってやっと見ることが出来たのでした。
中世アルメニアの詩人、サヤト・ノヴァの言葉を元に構成された映像詩。イマジネーション豊かに展開する、愛と才に溢れた詩人に対するオマージュ作。
ストーリーらしいストーリーと言ったものはなく、詩人の少年期からその死に至るまでを、8章に渡り各時代のエピソードで物語ってゆく散文詩と言ったところ。独特の映像美で知られるパラジャーノフは、ここでもはっきりとその手練を見せています。
大雨によって浸水した教会。そこには多くの書物が収められており、雨後、教徒たちの手によって天日に運び出され、ページを乾かすために屋根一面に広げられる。
このように「書物」から始まる物語は、正に開かれた1ページから、アルメニアの歴史のひとつひとつが思い出され、そしてそれが現実で展開して行くかのような、マジックリアリズム的な幻想性に溢れるもの。
アルメニアの伝統文化と言ったものを、現代的でシュールな手法に乗せ、いささかアヴァンギャルドなアートとして描いて見せます。エイゼンシュテイン的なやり方も散見され、ある意味とても実験的な映像となっています。
劇画チックでミニマルな作風は、人間的と言うよりもむしろ宗教的な色合いが強く、作品全編を通して儀式ばったところが感じられます。その非人間性によって、より神秘的な色合いを帯び、映像に神聖なる印象を与えるでしょう。
個人的には、正直見ていてワケが分からなかったのですが、かと言って見て損した感覚は微塵もありませんでした。もはや物語ですらなく、「おもしろいかおもしろくないか」と言ったことを超越した次元であり、つまりは批評の対象にもならない作品であると言えるでしょう。
“ただそこにある”だけで、その存在の意味を成していないものと言うのは、それだけで人々に恐ろしい感覚を与えることになるのでしょう。
最後に、パラジャーノフが残した名言をひとつ御紹介しましょう。
「私も自分で作っている映画がさっぱり分からない」

@ちぇっそ@