天国に行くにはまず死すべし

天国に行くにはまず死すべし

インポテンツに悩む青年カマルは、なんとかセックスが出来るようになろうと、いろいろな女性にアタックをかける。しかしことごとく無視され、終いにはいとこのつてで娼婦にまで手を出すが、ベッドの中でやはり彼は立たなかったのだ。そこでカマルは、以前会ったことのあるヴェラを探しに、彼女が働いている縫製工場へと向かう。再会を果たした2人は夜を共にした。ところが朝、カマルが目覚めてみると、そこには久しぶりに帰宅したヴェラの夫がいたのだった。彼は、見逃してやる代わりに俺の仕事を手伝えと言う。闇の組織に通じているヴェラの夫。カマルは危険な仕事に手を染めることとなる。
シャムシェド・ウスモノフ監督による、2006年タジキスタン・フランスの合同作品。前半は少し下世話なコメディ。後半からはクライム・ムービーを匂わせる展開へと移行する。但し基本にあるのは、性的不能を抱えるカマル君を中心としたヒューマンドラマである、と。
非常に情けない感じのカマル君。女性を求めて徘徊する様は、ほとんど単なるストーカー。ほとんど何事も起こらず、まったりとした展開がしばらく続くのですが、正直冗長な感じがするのは否めないところ。
ところが、何をやりたいのか、どこへ行きたいのか、要領を得ないカマル君の挙動不審振りにはまってきて、段々とおかしさがこみ上げてくると言うことは有り得るのですが。
縫製工場で働くヴェラと言う女性に近づいたのも、もとはと言えばストーカー的なつけまわし行為が動機。結局彼女が忘れられなくて仕事場まで追いかけてく行くのですが、ヴェラ自身も影を負った女性であるので、この哀れな青年に母性が働いてしまい、家まで連れ込んてしまったのでしょう。
ヴェラの夫はいわゆるマフィアでしょうか。妻の浮気現場を目撃し、その相手であるカマル君を脅して一仕事させようとするわけです。しかし良心を捨てられない彼は、ある場面でヴェラの夫を裏切ることとなる。
ヴェラの元に帰って来たのはカマル君一人だけ。2人は愛を交わすのですが、結局カマル君はすぐにヴェラの元を去って行かなければならない。またそれを当然のことのように、あっさりと送り出す彼女。
さてカマル君は、何を得て、何かを失ったのでありましょうか。全く、なんとも形容のし難い映画でしたが、後半は壮絶なものがありました。
それはサスペンスがどうのと言ったものではなく、愛と言いましょうか、いえもっと下品な言い方をすれば、「性欲」そのもののほとばしりがあった、とした方が正解かも知れません。「性」と言うものの生々しさだけが、この作品で一番印象に残る部分だったでしょうか。
カマル君役を演じた俳優さん。端正な顔立ちで、しかもやけに素に近い演技、と言うどこか素人っぽい佇まいが、どことなく故セルゲイ・ボドロフJrを思わせるところがありました。
作中では、ロシア系の人種と話すときと、現地人同士(こちらがメインになる)の会話で、別の言語が話されていたように思います。恐らくタジク語になるのでしょうが、アラブ風な訛りが多少聞き取れたでしょうか。
さすが多民族な地域だけあって、映画の中でも普通に2ヶ国語くらいは出てくるのでしょうね。

@ちぇっそ@