つんぼくんとメクラちゃんと片輪先生の大冒険③

片輪先生の涙は黒いのです

〓だい三わ〓
「りじちょうをやっつけろ」



ある日、メクラちゃんが泣いていました。
「ど、どどっ、ど、どうしたんだウィっ、メクラちゃん!」
しんぱいになった片輪先生がこえをかけると、メクラちゃんはこうこたえました。
「あのね。算数の授業中、先生がわたしに、ラマヌジャンのτ関数を解いてみろって言ったの。でもわたし、わからなくて。
そうしたら先生が『コイツはメクラなのを良いことに、都合の悪いときだけ見えないフリをするひきょう者だ!』って言ったの。
それがとってもかなしくて、かなしくて」
メクラちゃんは、またシクシク泣きはじめました。
片輪先生は、はなの穴をひろげておこりました。
「め、め、メクラちゃんのお話聞いてたら、は、は、腹がへってきた!じじゃない、立ってきたニョ!ままま、ま、まった、まったっく、ヒヒヒ、ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒドいヤツだ!」
片輪先生はひどいどもりでした。
すると、ちょうどそこへ、ガリボリくんアイスキャンデーふうせん味をくわえた、つんぼくんが通りかかりました。
ちなみに、ガリボリくんアイスキャンデーは、このほかにソドム味とマルキド味があって、つんぼくんは、3本に1本はソドム味をたべるのです。
片輪先生はあわてて言いました。
「ね、ねねぇ、つんぼくん聞いてニョ!め、め、メクラちゃんが・・・」
ガリッ、ボリッ!」
「めめ、メクラちゃんがいじめられて・・・」
ガリッ、ボリッ、ガリッ!」
「たたた、大変!な、泣いキゃったんだ!」
ガリッ、ボリッ、ガリッ、ボリッ、ガリン!」
片輪先生がはなしおわったのに、つんぼくんは、ひとこともこたえませんでした。
「つ、つつ、つんぼくん。いマっ、こ、今度は、目くらになっちゃったニョかい?」
目がみえなくったら、さすがのつんぼくんも、読唇術がつかえませんものね。
「ねえ、聞いてつんぼくん。わたし、算数の先生にいじめられちゃったの!」
すると、つんぼくんは、いかりをあらわにして、
「なんだって!それはけしからん!」
と、大きなこえでどなりました。
じつは、つんぼくんは片輪先生のはなしをきちんと聞いていたのですが、すこし疲れぎみだったので、おバカのあいてはしたくなかっただけなのです。
つんぼくんは、かくしんはんてきに目くらのまねをしていたのです。
「こここ、こうなったら、教育委員会にうったえてやるのニョだ!」
たまには、片輪先生もいいことを言います。
でも、つんぼくんは、片輪先生のいけんをさえぎって言いました。
「現状では、いくら教育委員会に訴えても無駄だね。学校の過失と言うものは、お上に伝えられる過程でもみ消されるものなのさ」
漢字がおおいので、片輪先生は、つんぼくんが何を言っているのかよくわかりませんでした。
つんぼくんがつづけて言います。
「『ガ・ッ・コ・ウ』が何の略だか知ってるかい?それはねぇ
『ガ』ガキの自殺の原因がいじめであっても、『ツ』都合のいいように口裏合わせをして、『コ』校長が自分の在任中の不祥事を隠蔽しようと、『ウ』嘘の報告をでっちあげるところ。
なのさ!」
「こ、こわ〜い!それじゃ、先生ぐるみで事実の隠蔽を行っているのね。だったら、自殺しちゃった子たちは浮かばれないわ」
メクラちゃんは、とってもやさしい子なのです。
「よし!それじゃあ、これからその教育委員会理事長の家へ行こうじゃないか!」
つんぼくんが、こえだかに叫びました。
「り、り、りり、理事長の家へ行って、いい、一体なにするニョだ?」
「それは行ってみてからのお楽しみさ!」
つんぼくんは、あるけいかくを立てていたのでした。
そして3人は、りじ長の家のまえにやってきました。
「つんぼくん。それは一体なぁに?」
メクラちゃんが聞くと、大きなにもつをかかえてやってきたつんぼくんは、片輪先生にむかってはなしだしました。
「ほら、先生。これが先生の欲しがってたラジコン飛行機だよ!これをあげるから、早速操縦してみてよ!」
つんぼくんは、ふとっぱらでした。
「いい、い、いいニョ!?これ、もらっていいニョか!?」
つんぼくんは「うん」とうなづき、片輪先生にプロポ(リモコン)を手わたしました。
「ワーイ!ワーイ!」
片輪先生はおおいにはしゃいで、ラジコンひこう機をりりくさせました。
するとどうでしょう。ラジコン機は片輪先生のそうじゅうをまったくむしして、あらぬほうこうへと飛んでいったのでした。
「あ、あ、あれれェ?“シこう機”、ぜぜ、ぜんぜん違うほうに飛んでっちゃうニョ!」
「ガシャーン!」
なんとひこう機は、りじちょうの家のまどをつきやぶって、2階のへやについらくしてしまったのです。
「あ〜あ。ひこう機死んじゃった!片輪先生、へったクソなんだからぁ!」
メクラちゃんは、少しざんねんそうにしていました。
「あ、えっ?やっ!オデは、そそ、そんな!“シこう機”が、し、しょう、勝手に!」
そのときでした。
「ボカーン!」
なんと、ひこう機がついらくした2階がばくはつしたのです。
「ああ!お家が燃えてる!」
りじちょうの家は、どんどんもえ広がっていきました。すると、どうこうを見まもっていたつんぼくんが、そのじょうきょうにあたってひとこと言いました。
「ざまあないや!これで理事長に一泡吹かせてやったぞ!みんな、悪の城の最期を見届けるんだ!」
「うッ、ウワワーイ!これは傑作だニョ!そうだ、そうだ!り、りか、理事長なんてくたばってしまえ!」
片輪先生は、やんやのかんせいを上げました。
しばらくして、つんぼくんがメクラちゃんに言いました。
「さ、そろそろかえろ。お母さんが晩御飯の仕度して待ってるから」
「そうね。でも、片輪先生はおいて帰ってもいいの?」
メクラちゃんは、たにん思いなのです。
「いいんだよ。だってここが、片輪先生の家なんだから」
そうなのです。じつは片輪先生のおとうさんこそ、りじちょうだったのです。
つんぼくんが、片輪先生にわたしたプロポはダミーで、ほんとうは、つんぼくんが見えないようにえんかくそうさをしていたのでした。
ラジコン機には、ねんりょうのかわりに、にとろぐりせりんがつまれており、ついらくのしょうげきとともにはっかしたのでした。
「いいぞ、いいぞ!オデのウチが燃えているニョだ!わわ、悪い理事長を懲らしめるるニョだ!せき、あ、あと、跡形もなく燃えてしまえ!ワーイ、ワーイ!」
片輪先生は、せいぎのヒーローきどりでした。


@うんべると・ちぇっそ@