バック・ビート

バック・ビート(字幕スーパー版) [VHS]

バック・ビート(字幕スーパー版) [VHS]

若き天才画家スチュワート・サトクリフ。彼は同じ美術学校の親友ジョンに誘われてロックバンドに加入する。そしてバンドの名声を高めるため、ハンブルグへ演奏旅行に飛んだ。彼はそこでアストリッドと言う女性カメラマンに恋をし、英国へ戻るバンドと懐を分かち、ドイツへ定住することに決めたのだった。しかしジョンとの友情が途絶えたわけではない。スチュワートの元にバンドのデヴュー曲が届けられた。しかしそのシングルを前にしながら、彼は昔の古傷がもとで発作に倒れてしまう。再びハンブルグにやって来たバンド。ジョンは、スチュワートの恋人だったアストラッドから彼の死を聞かされる。親友の死を告げられた男の名はジョン・レノン、バンドの名はビートルズと言う。
ビートルズの初期メンバー、スチュワート・サトクリフの短い人生を追った物語であると同時に、アーリー・ビートルズのバンドヒストリーでもある作品です。
本作の主人公であるスチュアートが画家であることからでしょうか、その映像も実にアーティスティックものに仕上げられています。バンドの演奏シーン以外は静かな場面も多く、端正な絵画で飾られた美術館をも思わせるようでした。
バンドに愛人関係のもつれはつきものですが(笑)、それによって離別し、かつては自分の一部であったバンドをいまやステージ下から応援することは、なかなか素直には出来ないものです。バンド経験者の私に言わせれば、うらみもねたみもなく、また利害とは全く別の次元で友の成功を喜べるのは、とても羨ましい関係であると思います。そんな理想的な関係が、ジョンとスチュワートの間にはあったと言うことですね。
“悲しくて”涙が出るんじゃない、これほどまでに“悔しくて”涙が出る映画も稀少でしょうか。早世した若きこの天才の、その不憫さと言ったら言葉がありません。才能もあり、また約束されたビートルズの成功と相俟って、生きていたら間違いなく彼も名声を得ていたであろうと考えるとなおさらのこと。
この悔しさと言うのは、例えば「高校最後の夏。地区大会で予選敗退し、全国大会に出場できなかった」感じの悔しさとでも表現したら良いでしょうか(笑)取り返しのつかないものを失ったときのやるせなさがありました。
しかしながら、情熱的な愛に生き、そして何者にも代え難き友情に包まれたスチュワートは、それだけでも十分にこの世で生きた価値があっでしょう。

@ちぇっそ@