廃墟ホテル

いつも古本屋で手にした、ちょっと前の作品ばかり読んでいるので、たまには新しいのも読まなければ!ってことで、デヴィッド・マレル著の「廃墟ホテル」を読んでみました。と言っても、こちらも刊行されたのは昨年の2005年12月なんですけどね!

廃墟ホテル (ランダムハウス講談社文庫)

廃墟ホテル (ランダムハウス講談社文庫)

<クリーパー>と呼ばれる、都市探検家のグループに参加することとなったバレンジャー。そこはかつての富豪、カーライルが建築した豪華ホテルだった。完全密閉された屋内には、近親相姦による遺伝子異常を来たした、3本の尾を持つネズミや、それらをエサとする5本足のネコなどが徘徊している。最初は館内を調査するだけの目的でやってきた探検隊であったが、彼らはそこで思わぬトラブルに巻き込まれることとなってしまった。彼らの背後に迫る謎の人影。老朽化し崩れ落ちるままとなっている館内で、絶対絶命のピンチが彼らを襲う!果たして、この迷宮から無事生還することはできるのか。
このホテルを建てたカーライルは血友病を患っており、彼は怪我を恐れるあまり、いつしか広場恐怖症となっていたのでした。そこで自分を守るため、このような要塞のごとく堅固な建物を建築したわけです。
ところがこのホテルには隠された秘密があり、各階に張り巡らされた隠し通路により、カーライルは全ての部屋を好きなだけ「覗き見」することが出来ました。外に出られないカーライルは、そうやって他人の人生を生きていたのです。
作品タイトルから察すると、ちょっとした幻想文学かと思われるかも知れませんが、実際はサイコなスリラー的要素も兼ね備えた、映画ダイハードのようなアクションに次ぐアクション。狂気に彩られた大脱出劇であるのです。
この建物象徴されるように、巻き起こる事件も実に偏執的。事態は2転3転し、いつ果てるともない危機的状況が、探検隊の運命を翻弄します。外界と隔絶された館内は異次元の様相を呈し、常軌を逸した恐怖が支配する空間です。
エンターテインメントに徹したジェットコースターのような長編。作者は映画「ランボー」の原作者としても知られる人物だそうで、その巧妙にして無駄のない筆致に、時を忘れて読み耽ってしまいました。その辺りはさすが!
作者であるマレルは、他に「トーテム」などを物しているそうですが、これは前から気になっていたSF的要素もあるホラー長編。近頃再販されたので、こちらも是非読んでみたいところ。
と言ったわけで、少し前に御紹介したヤン・ヴァイス「迷宮1000」の余韻を引きずり、「巨大屋敷」繋がりと言うことで本書を読んでみた次第。建物にまつわる物語と言うものは、古今を問わずそそられる題材であります。これって、人間の持つ帰巣本能がそうさせるのでしょうか。しかしそこにあるのは安堵ではなく、恐怖と怪異が待ち受けている!と言ったギャップが、余計に人々の興味をひきつけるのでしょう!

@ちぇっそ@