つんぼくんとメクラちゃんと片輪先生の大冒険①

つんぼくんメクラちゃん片輪先生

∈だい一わ∋

『しほんしゅぎの国のふりーくす』


ある日、つんぼくんとメクラちゃんと片輪先生が遊んでいました。
缶蹴りごっこをしていると、メクラちゃんがこう言いました。
「あれ?このにおい、何のにおいかしら?」
すると、つんぼくんが答えて言いました。ちなみに、つんぼくんは読唇術ができるのです。
「これはねぇ、資本主義の臭いだよ」
つんぼくんはもの知りなのです。
「資本主義ってなぁに?」
メクラちゃんが、つんぼくんにたずねました。
「資本主義ってヤツはねぇ、病気の牛を無理やり食べさせようとしたり、大きなミサイルを持って敵を威嚇したり、東の端の国が金メダルばかり取っていると、勝手にスポーツのルールを変えたりするいじめっ子なのさ」
メクラちゃんは感心してこう言いました。
「ふぅ〜ん。ジャイアンみたいな子なんだね」
何度も言うようですが、つんぼくんは読唇術ができるのです。
「ううん。ジャイアンは石油会社の後ろ盾がない分、まだタチの良いほうさ」
つんぼくんは本当にもの知りです。
2人の会話に、となりでバカみたいな顔をして聞いていた方輪先生が入りこんできました。
「し、資本主義って、お、お、おいしいニョかな?」
片輪先生は本当にバカなのです。
片輪先生には右足がなく、脳みそもちょっと足りませんでした。またこれからも、ちょくちょく足りないものが見つかるかも知れません。
「そうだね。そのおいしさがみんな、甘い罠になってるのさ」
つんぼくんは、少しだけニヤっと笑って答えました。
「でも先生、そんなこと聞くなんてとっても変ね」
メクラちゃんはニコニコしています。
「そうだね。先生ってほんとおかしいや!」
「アハハハハハー!」
あんまりおかしかったので、3人は大声で笑いました。
「それっ、それじゃ、それじゃあ!資本主義って、やや、やっぱり“ぱべられる”んだ!」
片輪先生が、しょうこりもなくまた聞きました。
「先生、根本的なところを勘違いしてると思うけど、資本主義は食べられないんだ。いや、正確に言うと、食べ物じゃないんだ」
つんぼくんは、少しうんざりしたように答えました。
「じ、じじゃあ、資本主義ってなぁ〜ぬ?」
片輪先生がしつこく聞くので、つんぼくんは全ての答えを言いました。
「資本主義ってヤツはねぇ、食べ物じゃなくて、逆にみんなを食べちゃうものなんだ!」
「えェ、怖い!それじゃ、わたしたちも食べられちゃうの!?」
メクラちゃんは、目に涙を浮かべて恐がりました。
「そうなんだ。みんな、骨の髄まで残らず食べつくされちゃうのさ!」
つんぼくんは、きょうふをあおるようにして声にドスを利かせました。
すると片輪先生は、うれしそうにこう答えたのです。
「だ、だったらボクは、か、片輪だから、右足だけは“ぱべられない”で済むニェ!」
つんぼくんは、ハッとしてそのとき気が付きました。
「そうか、ないものは食べられないもんね。右足だけ食べられないなんて、先生はなんて運がいいんだ!」
涙をふいて、立ち上がったメクラちゃんが叫びました。
「片輪センセイ、バンゼーイ!バンゼーイ!」


@うんべると・ちぇっそ@