浅草エクストリーム VOL.6


さて本日は、浅草エクストリーム「ドゥームの陣」でありました!出演するバンドのほとんどは激重・激遅、更には病的な神経サウンドをもたげ、めくるめく業火の“地獄篇”を奏でる、“あの世の一大ページェント”とも言える一夜となりました。
ワタクシもFUNERAL MOTH(以下、モス)でヘルプ参加。このノーテンキなモサ男ひとり、厳粛な雰囲気に馴染むことなく、もしかしてとんだ場違いを引き起こしていたならどうもすみません。空気を読めず、大変申し訳ない!
と言ったところで、事前(イベント的には事後か)の謝罪を込め(笑)、この日のイントロダクションと代えさせて頂きます。
トップでリハを終えた我らがモス。朝からまだ何も食っておらず、腹が減った私は、ベースのS氏と連れ立って昼食を取りに出掛けました。
ギターのF島氏から道順を聞いて、ラーメン屋のあるところまで辿り着いたは良いのですが、昼時とあって店内は大変な混雑。他に店を探そうにも、辺りの見渡せる範囲にめぼしいお店はない。仕方がないので、その“行列の出来るラーメン屋”の傍らに隣接する、とある台湾料理屋へと潜り込むことにしました。
S氏はわりと普通めなラーメンセット。私はなんだか“ジャージャーメン”みたいなランチセットを注文。夫婦と思われる台湾人カップルが経営しているお店。ランチセットには半チャーハンと餃子2個が付いてくるのですが、ちょうど私の番になって、餃子の作り置き1個を切らしてしまった模様。
「アトカラ、モ1個 モテ来ルカラ チョト待テ!」(いえ、実際はもっと発音上手でしたがね)
調理場にちょうど背を向ける形で座っていた私。厨房からは、何やら2人の騒がしい会話が聞こえてきます。私の右脳で展開していた光景は、コックの服を着たオヤジさんが餃子の具を皮に包んでおり、それをおかみさんが囃し立てるように、
「あんた、早くやんなさいよ!お客さんがお待ちだよ!」
「何言ってやがんだ!こちとら、そう手際よくはいかねぇんだよ!」
とかやっているものと思い込んでいました。ところが私の正面に座り、私の背後をつぶさに観察していたS氏の談によると、
「餃子焼いてたの、おかみさんだったよ」
とのこと。餃子を皮に包むことなんてやってないし、何をそんなに話すことがあるもんだ?だったらどうして、餃子一個出てくるのにこんなに時間が掛かったのだろうか。結局餃子が出来てきたのは、私が半チャーハンを最後2,3口残すだけとなった頃でした。
熱いのを予想して、チャーハンと一緒にかきこみましたよ!味は別に悪くないッスよ。でも我々が入店してから出るまで、私らしかお客はいませんでした。もっと隣の客もこっちに来れば良いのに。
と言ったところで、やっとこさライヴレポです。と言いましても、自分の出演(仕込みの時間)もあり、あまりちゃんとは見れなかったのでごく簡単にご紹介!
トップバッターはBUTCHER ABC!ドラムには遂にH本氏が正式加入。志も新たに迎える、大事な大一番であります!しかし今日のブッチャーは少々トラブルに見舞われてしまい、微妙にスロースタートとなってしまいました。途中に出番が控えているので、あまり酔っ払うことの出来ない私も(笑)思うように盛り上がることが出来ず、少し不運なことになってしまいましたね。しかしながら、ラストでは最前列で見ていた元メンバーのブッチャーK氏を引っ張り出し(!)、懐かしい4人体制でのブッチャーを見ることが出来ました。ここら辺でやっと少し盛り返しました!
2番手はSu19b!元FINAL EXITのドラムを擁する、どんより系スラッジとスカム系グラインドの融合したバンド。床にへたり込んだまま喚いているヴォーカル氏は、実は本当に二日酔いだったりした模様(楽屋で聞いた:笑)。しかしそれが逆に功を奏して、実に病的な空間を作り上げていました。瞬発力のあるドラム氏のプレイはさすが!緩急自在なダイナミクスを演出しておりました。
さて、次が我々FUNERAL MOTHであります!今回ワタクシのテーマは、「マニラ辺りの闇取引で一山当てた、用心棒上がりの成金山師」と言ったところ。言ってみれば、取引現場に現れた秘密捜査官のジャッキー・チェンからボスを守る為、かなり良い所まで奮闘してジャッキーを一瞬だけ窮地に追い込むが、最後はコテンパンにやられて、「フィクションとは言え、これはちょっとマジ痛そう!」ってな死に方で死んでしまう、悪役「A」ってところですかね。ハイ、わかりづらいっすね。
一足お先に楽屋で着替えていたところ、そこへ入り込んで来たモスのS氏とブッチャーのH本氏がこぞって携帯を持ち出し、その場でプチ撮影会。私は“見事なる被写体”となり、気分良く撮影に応じました。これだけウケが良ければ、そろそろ私が「秋葉デヴュー」する日もそう遠くないかも!?
自虐的なネタはさておき、演奏の方はですね、曲が曲だけに(とてつもなく遅い)大方の予想通り、どのようにノッて良いか分からぬオーディエンスが、“じっくりと(シーンと)”してご覧になられていたご様子。しかしステージを降りた後、何人かに声を掛けて頂きまして、どうやら楽しんで頂けたようで何より(「あれは汚ねぇ、反則だ!」と言う貴重な意見も)。
お次はCOFFINS。しかしこの時、到着が遅れていたCORRUPTEDとASUNDERを載せたバンが、ライヴハウス前へ乗りつけたとの情報が入ったのです。関係各位はこぞって表へ飛び出し、大掛かりな機材の搬入作業に取り掛かることになりました。
COFFINSが終了し、次に演奏を行うGALLHAMMERの転換中に、全ての機材を運び込んでひと段落。いやぁ、一時はどうなることかと思う場面。よもや主役不在!?との危惧に、ホッと胸を撫で下ろした関係者一同でありました。
でもお客さん的には恐らく、「おお!来たな、CORRUPTED!」正に嵐を伴ってやって来たバンドに、思わず気分を高揚させていたに違いありません!(私だったら多分そうなるなぁ:笑)
でぇ、GALLHAMMER!今夜はいつもより若干長めに演奏。じっくりジクジクと、時間がある分、手によりを掛けてオーディエンスを麻薬的に虜にして行きました。カタルシスの後の虚脱感が、なんとも言えず良い感じっスね!
さあ遂に登場、重鎮CORRUPTED!巨大なアンプ、巨大なドラムキット。全てにおいてスケールがデカイ!ステージ上では、まるで要塞の如く機材が聳え立っているではないですか。一体これから何が始まるのか?私の気分は、アウシュヴィッツに閉じ込められた一般市民のように、不安で胸が張り裂けるような思いでありました。そして鳴り響いた一発目の轟音。それは耳へ届く前に、脊髄を伝わって脳を震わせるほどの威力。服はビリリと振動し、音が「物質」であることがはっきりと感じられる瞬間でありました。当然、ここへ来てオーディエンスも最高の盛り上がりを見せ、荒れ狂う人の波が大きな“うね”となって会場を飲み込んで行ったのです。
ステージには終始青白いライトの薄明かりが灯され、その情景は、大海で荒波に揉まれる絶体絶命の難破船のように、もしくは既に海の中か?と言ったようで、生きているのか死んでいるのかも釈然としない混沌が広がっていました。もはや音楽や芸術と言った定義を超えて、五感で体験する原始のリビドーのような趣すらありました。
久々のCORRUPTEDでしたが、やはり凄かったっスね!目の前に“何かの景色が見えてくる”感じがヤバイです(笑)いつもより演奏時間が短いのが残念でしたが、とにもかくにもこの音の洪水は最高に気持ち良かったです!
そしていよいよ、ここ日本でその神秘のヴェールを脱ぐUSドゥームの刺客、ASUNDER(「A」は発音しないので「サンダー」だそう)参上であります!ドラムには、これもまたUSドゥームの伝説であったDYSTOPIAのメンバーが座っております。ドラムの彼はヴォーカルも兼任。そしてギター2本にベースと言う4人編成(本当はヴァイオリンがいるとの話も?)。
先ずは、そのメンバーの並び位置が独特。ドラムが手前に来ており、ステージ向かって左手にギターが座り(どうやらこちらのメンバーは元々足が悪い様子)、ドラムの後ろ側にベース。それから右手に、もう一人のギターが立つと言ったポジショニング。それこそ軽くジャムセッションでも合わせるかのような、とてもオーガニックでナチュラルな雰囲気が漂っていました。
そして演奏スタート。先ほどのCORRUPTEDのように音圧で圧倒すると言う感じではなく、もっと純粋に音楽を“聞かせる”イメージで、徐々に聞き手の陶酔感を煽って行くのです。その音色はオリエンタルと言うか、どこかミサのようでもあり、ある種の神々しさが漂っているもの。
個人的には、英国はグランストンベリー辺りの草むらに横たわり、日がな一日音楽を奏でている、気ままな吟遊詩人と言った印象を受けました。見ていて和むのは確かなのですが、音楽の根底にはしっかりと「ロック」の筋が通っており、メタルとかドゥームとか言うよりは、むしろ「クラウト・ロック(この言い方、懐かしいね!)」の亜種であるとさえ思われました。
もうね、フォークですよ、フォーク・ロック。それもとびきりカルトな!
この手のイベントでこのようなバンドを見るのはとても新鮮であり、個人の趣味趣向を越えて、そこにいた多くの人たちの心を捉えていた様子は、ASUNDERが持つ音楽的な懐の深さを伝えるものであったことを、ここに記しておきましょう!

@ちぇっそ@