「ヘッドハンター」

ヘッド・ハンター 上 (創元推理文庫)

ヘッド・ハンター 上 (創元推理文庫)

ヘッドハンター 下 (創元推理文庫)

ヘッドハンター 下 (創元推理文庫)

えーっと、タイミング逃して滞っていた読了本などの感想をひとつ。
3人の弁護士からなる合同作家、マイケル・スレイドによる猟奇犯罪テーマのサイコ・ミステリ。既にシリーズとして6冊の長編が出版されていますが、これはその第一作目に当たる作品。
2作目以降は比較的、それ単独で読んでも堪能できる佳作が多いのですが、それでも過去の事件や人物についての叙述多い本シリーズは、一作目から順当に読み進めて行くのが本筋かと思われます。
第六作目となる「斬首人の復讐」は、実はこの「ヘッドハンター」の直接の続編になるもの。こともあろうに私ときたら、先にこちらの「斬首人〜」を読んでしまったものだから目も当てられない。
事件の背景などがイマイチ掴みきれないまま、謎解きの妙すら味わえず(と言いますかスレイドの場合、全てを台無しにする驚天動地の”大どんでん返し”となるわけですが。但し毎度不発気味:笑)、なんとも言えぬ消化不良に終わってしまったことをお詫びしておきます(誰に対してだ?)
しかしながら「斬首人〜」で救いだったのは、“狂犬(マッドドッグ)”と呼ばれるロシア系のラビドゥスキィ巡査長が大活躍する、数々のアクション・シーンの醍醐味を満喫できたことでした。シリーズでもイチにを争う個性派キャラで、私も大好きな登場人物ゆえ、これは彼の為の作品と解釈して巻を置いた!と言うことになりますか。
このようにして読む順番を間違えてしまうと、更なる悲劇を引き起こすことに至ります。事件の全貌が露になった後となっては、この第一作目である「ヘッドハンター」を読む楽しみまで奪われてしまうからです。
ここまで書いておいてアレなんですが、「この順番で読んではいけない!」私が示した「悪いお手本」に従わないで、ちゃんと「ヘッドハンター」から読みましょう!との警告を出して、このほどの書簡を終えようかと思います(笑)
後の作品に比べると、比較的まっとうな警察小説。但しその猟奇的表現は既に本作から開花の兆し。これからマイケル・スレイドを読み始めようと思う方には、是非ともご一読をお奨めしておく一作であります。
主人公である、ディクラーク警視正に対する思い入れの度合いも変わってきますからね。彼の抱える苦悩と言うのは、後の作品にも大きく影を落とすもの。“始まりにこそ全てが内包されている(1stアルバムが大事だよ!ってことすね)”との格言の下、全てのスレイド作品はここに帰結するわけですから。

@ちぇっそ@