「ドン・キホーテ」

ドン・キホーテ (WRITERS X)

ドン・キホーテ (WRITERS X)

と言いましても、セルバンテスの原典でもギリアムの「ロスト・イン・ラマンチャ」でもありません。キャシー・アッカーの長編小説を読みました!女版ウィリアム・バロウズとも評されるポストモダンの極北たる女流作家です。
剽窃」と言うテクニックを用い、古典文学からカウンターカルチャーに至るありとあらゆるテクストをぶった切って再編集し、そこに諷刺と諧謔と、“ほんの少しの”精神錯乱をまぶして誕生したのが、世にも稀な「痛みに良く耐えて頑張った!」痛くて、さぶ〜い作品なのです。
大筋はセルバンテスの「ドン・キホーテ」から成るようですが、私は原書を読んだことがないので比較は出来ません。どこいら辺からどこいら辺を再編しているのか、とかね。
まあわかりやすく言えば、要するに「リミックス文学」なのです。元のネタをアレンジしたり、気に入ったフレーズをループさせてみたり、現代のハウスミュージックに近い手法であると言えば、ある程度酌量の余地はあるかも知れません。
実験文学の一種と言うこと。従って、内容はいわゆる「お話」の体を為していませんし、脈絡も性別も超越してしまった物語は、一体何を伝えたいかさえ判然としないものです。しかしこれが実に力強い説得力に満ちているのですからタチが悪い。
物凄くおもしろいとは言いましても、それはガイキチの頭の中を覗いたときのようなおもしろさであって、決して起承転結がウルトラC級にぴたりと着地の決まったおもしろさではないということ。
解説には、ちょうど中絶手術を前にして発狂してしまった作者が、精神倒錯したまま筆を握って、ついでにチンコまで握って、男社会批判を込めた理想の女性像を恥ずかしげもなく披露する、とっても疲労する作品だと言うことが書かれているわけです。
今時の痛い人のブログなんかを拝見すると、それはそれは“イタイイタイ”わけですが、それよりももっとイタイのがこのキャシー“バイセクシャルボディビルダーHIV感染者・スキンヘッズ”アッカーであると言うわけです。
ハイ。私はこれを読んで元気が出ました。アナタは?共感し過ぎる人はつまらないかも知れませんが、恐らく世の女性のほとんどは共感できるお話かと思われ、そんな共感できた方々はすべからズ精神が病んでいるとの倫理検証が必要かも知れません。
我々男子は、そんな狂人であるアナタ方をいつまで経っても理解できない、とってもつまらない存在なのですから!

@ちぇっそ@