「IT」

IT(1) (文春文庫)

IT(1) (文春文庫)

たまには書評でも。言わずと知れた、モダンホラーの大御所スティーヴン・キングっす
1冊500ページ近い文庫で4巻と言う、キングの中でもその長大さで群を抜く作品。“モダンホラー作家としての”キングを代表するとも言われる本作ですが、その噂に違わず、実に読み応えがあり、そして作中の伏線を丁寧に拾い上げる周到さ。またラストのカタルシスからエピローグに至る余韻まで、どこを取っても「キング印」に陰りを見せない傑作でした。今更何をか言う!と言ったところですが、簡単にあらすじを説明すればこう。
昔デリーの町で起こった数々の事件の裏には、必ず「IT」の影があった。“それ”は見る人によってあらゆる形を取るのだった。そんな怪物に真っ向から立ち向かった少年少女たちがいた。彼らは成長し、町から出て昔の記憶などすっかり忘れ去っていた。しかし!27年後のある日、また「IT」が猛威を古い始めた。あの日交わした約束により、再びデリーの町に集った彼らは、かつての“記憶”をたどりながら「IT」との最終決戦に臨むのだった。
怪物との戦いのクライマックスでは、正にSF的な稀有壮大さを持ってストーリーが展開し、スケールの大きな一大叙事詩へと変貌するのです。度肝を抜かれ、呆気にとられ、そんなビッグサプライズの後に訪れる静寂。それは“子供”から脱却する様に似ていて、自分の意思ではどうにもならない虚しさで満たされます。
しかしまあ、おセンチになった気分を満足行くまで慰めてくれる(いや更に浸らせてくれる)、素敵なエピローグがとにかく秀逸。このラストの”たった50ページ”を堪能するために、長大な1900ページを読むのもまた一興かと。

@ちぇっそ@