アール・ヌーヴォー散策

エミール・ガレ―創造の軌跡展

エミール・ガレ―創造の軌跡展

今日は渋谷bunkamuraへ、「エミール・ガレドーム兄弟展」を観に行って来ました。
共にフランスはナンシー派に属する工芸家と言うことになりましょうか。外交上の戦略、もしくは友好のため、フランスからロシアへとその作品が謙譲されたそうです。それらのほとんどはエルミタージュ美術館へ収蔵され、同美術館の中でも秘蔵のコレクションとして珍重されるもの。今回、日露国交回復50周年を記念して開催された展示会では、それら収蔵物のほぼ全てが公開されているのです。
もちろん私は“エルミタージュ”と言うキーワードに惹かれて行ったのであって、工芸品の中にロシア人による作品はひとつもありませんがね。
さてさて、そんな「エミール・ガレドーム兄弟」ですが、それぞれにやはり特徴的な作風がありました。
ガラス、陶器、木工細工の3分野で成功を収めたガレは、とてもヴィヴィットな衝動に溢れており、アール・ヌーヴォーと言う自然回帰の運動の中で、自然の造形をつぶさに観察し、それらをリアルに表現することに熱心だった感があります。
「蘭」の研究にも精通していた彼は、花々や木々の表現はもとより、カエルやトンボと言ったモチーフまで用いて、一見して遊び心のある作風を取っていましたね。しかしながら、かなり偏執的なまでにそれらに固執するあまり、結構エキセントリックと言うか、ある意味キッチュな印象すら与えるものでありました。
だって、普段使うにしろ飾るにしろ、花瓶やらなにやらに、ひょうきんなカエルやトンボの図柄がエッチングされているんですから。(※エッチング:腐食作用を応用した表面加工の技法@さっそく今日得た知識をひけらかしてみた)
その最たるものが、直立した“トンボ”が4脚の足となった、微細な寄木細工が施された机だったでしょうか。お尻で突っ立ったトンボが、頭と羽の3点でもって、机の4隅を支えているのですから。トンボがリアル過ぎて、でも現実にはありえない構図に、ちょっとだけ「キモカワイイ!」印象を持ったのは、私だけではないはず!?
しかしまあ、その技術は大したもの(お前が言うなですって?)。その精密さに、思わず時を忘れて見入ってしまうほどでした。
ガレのもうひとつの特徴として、作品に込められたメッセージ性の強さがあげられるでしょうか。彼の故郷であるフランスはロレーヌ地方のナンシーは、ドイツとの紛争の火種となり、その大半を占領されていたそうです。
そのような中で、ドイツに対抗しているロシアに対し強い期待を寄せ、故郷ロレーヌの自然の素晴らしさを作品に写し取っていたと言うわけですね。
さて、そんなナンシー派が誇るもう一組の巨匠、ドーム兄弟の作品はどうだったのでしょう。同じくアール・ヌーヴォー調で、自然の情景をモチーフとした点はガレと同様ですが、ドーム兄弟の方がよりロマンチックな感があり、非常に親しみ易い印象を受けるものでした。
ドーム兄弟が好んだ技法のひとつに、ガラスの中に別の色のガラスをおぼろに浮かびあがらせるものがありました。まるで淡い花が咲いているような感じとなり、これがなんとも言えない柔らかさを作品に与え、見る者を和ませる効果がありました。
また中国や日本における東洋芸術の影響も垣間見え、水墨画のような抑えたトーンのガラス工芸なども特徴的でした。すごく可愛らしい、「とっくりとおちょこ」のような作品もあり、これで熱燗したらさぞ美味いだろうだなぁ!と、思わず「ゴクリ!」と生唾を飲んでしまう場面も(笑)
やるな、ドーム兄弟!(くれぐれも“ドゥーム兄弟”ではない@スペル違うし「DAVM」これで“ドーム”と読む)と言った次第であります。
そしてその後「アール・デコ」へと発展する作品も少々展示されており、その中にはあの“ティファニー”も含まれておりました。スタイリッシュで、シンプルなんだけど、目を惹き付けて止まない美しさがありました。さすがですね。
お土産ものコーナーで、今回の美術展とは直接関係ないのですが、「ボッシュ」の作品のフィギュアを発見。つまり、あれです。デカダンな作風で知られる、メタル者には「カテドラルのジャケみたいな絵を描く人」と言うと分りやすいでしょうか。
パラレルワールドから飛び出した異形のケダモノたち。そんな「変カワイイ」キャラがとても興味を惹きましたが、ひとつ3,4千円くらいするので断念。近くで見ていた女性も連れの男性に向かって、「。。それに、ひとつだけじゃもの足りないしね。いっぱい揃えて、賑やかなほうが楽しい!」って言ってましたから!
夜はNHKの「芸術劇場」で放映されていた、ボリショイバレエによる「スペードの女王」を観てました。大胆でダイナミック。そして物語性に富んでいて、正直バレエの見方など分らない私でも、なんだか楽んで観られる素晴らしい演技でありました。
そして「芸術劇場」の後半では、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやら、アンディ・ウォーホルなど「アメリカ」を象徴するキーワードで進行する、前衛的なバレエ映像作品が放映されていました。ついでなので観ていたら、なかなかに引き込まれるものがありまして、こちらも最後まで鑑賞してしまいました。
使用曲の歌詞にはルー・リードが携わっており、アメリカ文化に象徴される、無駄のないシャープなカッコよさがありましたね。
たまにはこう言うのも良いですね。

@ちぇっそ@