ロシア太郎

はてさて、連日お伝えしております通り、私の今月は“ロシア時間”で進行しております。よって故に、本日はお店を休んでまでロシア映画を見るため、東京フィルムセンターへと参上仕ったわけです。
今日見た映画は、「人生案内」と言う、1931年製作のロシア初の長編トーキー映画でした。まあ、詳細なリポートはこの際省かせて頂きますが、なかなかどうして、各所に創意工夫が凝らされ、全編飽きさせることのない力作に仕上がっていたと思いますよ。
弱冠、当時のプロパガンダ的な扇情が見受けられましたが、栄光に満ちたロシアを目指すべく、未来への道しるべを築き上げようとするかの情熱に溢れています。戦争で親を失ったりした孤児たちが主人公なのですが、言ってみれば、この若き未来の騎士たちへ向けての“人生案内”を示した作品だったのではないでしょうか。
とまあ、それはともかく。今回に限らず、ロシア映画を見に来るお年よりのなんと多いこと!って言いますか、9割がたが高齢者なんじゃないですかね。もうね、凄いですよ。加齢臭はもとより、既に死臭漂う・・・、いや失敬!そんなことを言っては、福祉の精神に反する冒涜と捉えられかねないところでして。
とにかくですね、ここまで来るともはやモラルとか道徳とか、そんな悠長なことは言ってられません。ほとんど無法地帯。責めても注意しても、もうどうしようもない世捨て人たちなんですから!
私が席に着いていると、「ちょっとすいません」なんて言って前を通り過ぎる。ああ、隣が空いてるから座るのかな。なんて思っていると、その前の座席に荷物を置いて席取りをする。だったら初めから一列前に入っていけよ!とか思うわけです。
しかしこれは序の口。私の2つ隣りに座った爺さん。椅子に「グッ!」と浅く腰掛け、ほとんどリクライニング・チェアのようにしてリラックスしています。そして場内が暗転、映画が始まると、「ウィッ!」とか、「ヒッ!」とか、しゃっくりだか“えずいている”のか、時々変な奇声を上げるのです。そりゃ気になりますけど、注意するのも気の毒ですからねぇ。
または、また私の2つ隣りに座った初老の方など、椅子に何度も座り返したり、勢いで前の人の席を蹴っ飛ばしていた様子。私個人は特に気にならなかったのですが、やはり直ぐ前に座っていた方はさすがに我慢ならなかったらしく、「ちょっと、静かにしてよ!」と声を荒げて注意しておられました。
しかし注意をして言うことを聞いてくれるレベルなら良いですが、こちらは少し事情が違った。手にしたビニール袋を「ガサゴソ」言わせ、上映中おもむろに席を立つ老人。トイレかなと思って、周辺視野で確認しながら警戒していると、ドアから出るでもなく、また舞い戻ってきて今度は別に席に座り直す。しかも私の三半規管が良く音を拾う位置に座して、そこでもビニール袋を「ガサゴソ」とやるわけです。
あちゃ。前もいたよ。もしかして川崎市市民ミュージアムで遭遇した爺さんと一緒かな。あ、でもあのときは夫婦2人して来てたっけ。2人して「ガサゴソ」言わせてたっけ。”徘徊癖”を付けて更にパワーアップか!とかなんとか。そんなこと、もうどうでも良いわけです。
開演前に交わされる会話も凄い。
「あら。○○さん!今日もいらしたのね」
「こりゃまた奇遇ですな!でもあなた、昨日はいらっしゃらなかったんじゃない?どーしたの!?」
「いえね。昨日も本当は来る予定でしたの。でも、どうしても体が言うことを利かなくてね。神経痛が出たのからしら。“未来へ迷宮”、是非見たかったのに」
「いやぁ!アレは・・・、そんなに見るべきってほどじゃあないなぁ」
「あらそうですの。でも、今日見たもう一本の“母”は素晴らしかったわ」
「え!?今日は何をやったんです!ああ、“母”ね!あれはイイ!あれは感動しますよ!ハハー!!」
日本の年金生活者は、今日も元気一杯でしたとさ!

@ちぇっそ@