ロシアは今日も荒れ模様

ロシアは今日も荒れ模様 (講談社文庫)

ロシアは今日も荒れ模様 (講談社文庫)

お店の営業中、一通のメールが届きました。送り主はFUNERAL MOTHのS氏。内容によると、作家でありロシア語通訳者である米原万里さんが亡くなられたとのこと。一瞬目を疑ったその記述にショックを受けながら、閉店後の後処理を行う私でした。
S氏とはつい先週、いつの間にやら逸れた話題がロシアよもやま話へと飛躍していった際に、その中で偶然、米原万里さんについて話を交わしたばかりでした。それが週明け、よもやこんなことになろうとは!
エッセイなどはほとんど読まないのですが、私はたまたまロシア好きと言うこともあり、米原女史のエッセイ集については何冊か手にしていました。彼女の書く文章は実に生き生きとしており、それは正にロシア人の心根をあますことなく伝えるもの。そしてロシアン魂が炸裂する痛快なエピソードの数々に、抱腹絶倒必死の”楽しんで理解するロシア民族史”といえるものであります。
彼女の体験談を読むだけで、ロシアの何たるかが分ってしまうと言っても過言ではないでしょう。しかし単にロシアに精通しているだけでなく、それを実に魅力あるものとして語ってみせる、米原女史のユーモアこそがとにかく楽しいのです。
バイタリティに満ちてはいるが、あきらめの良さも抜群。「こうなっちまったもんはしょうがない!」いかにもロシア的と言える“ポジティヴな無気力感”を備えた、恐らく日本人の中で一番ロシア人に近い人物だったと言えるのではないでしょうか。
いやあ、本当に米原女史の文章は素敵で、何度でも読みたい文章の数少ないひとつでした(こうして過去形で伝えなければならないのが辛い)。56歳と言う、作家としては正に、これからが円熟に向かうと言った矢先での訃報。とても残念でなりません。
エッセイも小説も、もっとたくさん読みたかったなあ。世の徒然とは、なんとも無情であることを痛感させられました。
地元へ着いた私は、近所の古本屋へ赴き、そこへあった米原万里著のエッセイをありったけ、3冊ばかりを買いあさって帰りました。素敵なロシア愛国者へのささやかな追悼です。
来月給料が入ったら、小説「オリガ・モリソヴナの反語法」も買いに行こう。

@ちぇっそ@