ユービック

ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)

ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)

いやもう梅雨前線がヒドイっすね!この季節にもう台風の話題なんざ、ちと夏の嵐までには早いんじゃありませんかね!
お店の帰りに、急に「リトルスプーン」と言う店のカレーが食べたくなったワタクシ。早速、小滝橋通り沿いのお店へ駆け込んでみます。お目当ては「特製トンカツカレー」。すると店内には、「期間限定19日まで!」なんて書いてあるじゃありませんか!
で、こりゃ急がなきゃ!なんて思って券売機を見たら、なんと「売切れ」。にわかには信じられないことになっていました。プチ・ムカついたのでとっとと店を出て、もう1件、コマ劇近くにある同チェーン店へと向かいました。
するとここではちゃんとあるじゃないですか!私は迷うことなく「特製トンカツカレー」を注文。事なきを得たのでした。食の恨みは恐ろしい。食いたいもんが食えないと、人間ってものは、急に人格が豹変してしまいますからね!このときばかりは、「世界なんて滅んでしまえ!」って平気で言えますよ。
え?「何を言ってるんだ、この資本主義の手先が!」ですって?こりゃまた失礼致しました。「こんな楽しい世界を簡単にやめられっか!」・・・まるっきしの図星でやんす。
それでは読書感想文です。フィリップ・K・ディックの「ユービック」を読みました。まあ、以前に一回読んでいるのですが、急にまた読みたくなっての再読です。ディック特有の、倒錯したストーリーが全開しているSF作品。
超能力者の集団に立ち向かうため、その能力を無力化してしまう能力を持った「不活性者」の部隊が月に乗り込む。ところが彼らは早速敵の罠に嵌められ、メンバーの大半が死滅してしまう。その時点から、世界が過去へ向かって退行してゆく不可思議な現象が起こり始めた!その退行を防ぐ唯一の方法は、「ユービック」を使うことだ。 事件の裏に隠された陰謀とは一体何であるのか!?
サスペンスがありますねぇ。SFミステリとしての楽しさに満ち、錯綜した事実がもたらす、どんでん返しに次ぐどんでん返し。後期の霊視的神秘的な作風によって、ある意味神格化されているディックですが、ここにはエンターテインメントの醍醐味が支配しています。
また一方で、「生きていることとは何か」「生と死の境界線はどこに引かれるのか?」など言った、後期に通じる幻想性も同時に内包しているものであります。認識論を組み立て直すとでも言ったような、シュールなメタファーすら暗示しているのですね。
まあしかし、そこら辺の難しいことは抜きにして、とにかくおもしろい作品でありました。物体がどんどん古くなってゆく。それはつまり、時代そのものが退行して、CDからレコードへ、そして更に蓄音機に退化するといった現象のわけです。その辺りの描写が実に見事で、まるで万華鏡のように、とどまることを知らずに変化する物質世界が、正に悪夢のように迫って来るのです。
もっとも例によって、矛盾の多いディック作品のこと、本作でも「アレ、これは?」となることがしばしあります(笑)しかしこの”きな臭いくて”キッチュな雰囲気が、ディックのたまらない魅力のひとつなのです。
こんな昔SFって本当に楽しいですね!またディック読もうかなぁ。

@ちぇっそ@