大統領のカウントダウン

パンフは買うものだ!!

軍事作戦の最中、あえなくチェチェンの捕虜として捕らえられてしまったスモーリン少佐。彼はありもしない、自分たちの部隊がテロ活動に関わった旨を証言させられる。それはビデオに撮影され、ロシア本国へと報道された。なんとか武装勢力の基地から脱した彼だが、祖国からは戦犯として追われる身。そんな彼をかくまうかつての上司、カルポフ将軍。そんな折、サーカスの上演中にチェチェン武装勢力の魔の手が忍び寄る。テロ部隊は劇場を占拠し、観客及び団員を拘束。ロシア政府に人質との交換条件を提示するのであった。
しかし、実はこの事件の裏にはアラブのテロ組織の介入があり、彼らはこの騒動を隠れ蓑にし、これより更に恐るべき計画を実行に移そうとしていたのだ!人質の中にはスモーリンの一人娘もいる。果たして、彼は拘束された人々を助け出し、アラブのテロ組織の計画を阻止することが出来るのか!
正に手に汗を握るスペクタクルと言った雰囲気の本作。ロシア発の本格アクション大作であります。
実際、伏線は良く練られており、物語の背景の裏の裏まで、世界が動く裏にはこのように何層にも連なる陰謀が張り巡らされているものだと、思わず「う〜む」と唸らされる緻密さがあります。
やはりテロの脅威を肌身で経験しているロシアだからこそ(アメリカの突発的なテロ被害とはまた一線を画すもの)、実に真に迫ったリアリティを演出出来た所以でしょう。
映画冒頭、スモーリン少佐が武装勢力の基地から脱する辺りは本当に緊迫感があり、その張り詰めた空気こそが芸術的とさえ言えるほど、さながらドキュメントの様相を呈する迫力がありました。
映像の美しさも特筆すべきで、この監督、いやカメラマンでしょうか。北カフカスの澄み切った空気の、その粒子のひとつひとつをとらえるが如き、清廉とした神聖さが溢れているようです。ロシアには古くから名カメラマンが数多くいるのですが、この作品でもその伝統を引き継いだ、素晴らしい映画職人がいることに嬉しさを禁じえません!
さて、しかし全体を見渡したところ、確かにリアルではあるし、テロの脅威に警鐘を与える深刻なるメッセージ性をも孕んでいることは充分に伝わってきます。ところが!それたをエンターテインメントととして演出するに当たり、古今の名作アクション映画から拝借されたと思わしき手法がそこかしこに拝見されるのはいかがなものか。
「あ、これはダ○ハード!?」「ここは、エア○ォースワン!?」ってな具合。
いえ、決してそれがダメってわけではないのですが、こうもあからさかまに引用されてしまうと、かえって潔い感じがして(笑)、途中からどうにもパロディ映画として見るに至ってしまった次第。実際、映画館にいる聴衆からは、もういい加減呆れてしまったと言ったような、ため息のような吐息すら聞こえて来ましたから(笑)
ラストには、それまでの全てをなし崩しにしてしまうほどの、決定的なご都合主義まで登場します。これにはさすがの私もひっくり返りましたよ。欧米では決してありえない展開に仰天すること請け合いです。
しかし、おもしろくなかったかと言えば、“ある意味”おもしろかったと(笑)古今東西のアクションの粋を集めたチャンポン振りに、「さあ、次ぎはどの作品の場面が登場するのだ!」と、別の意味でのおもしろさ発見に一喜一憂できることでしょう。
見終わって、「う〜ん!」と釈然としないものが残るのは間違いないところですが(笑)、映像のロケーションの素晴らしさなど、確かにスクリーンで観ても損はしない作品とは思います。
尚、個人的にはロシア映画の名場面のひとつに数えたい、ヴェリナイスなシーンがあったことを記しておきましょう!手のひらにセンサーを付け、手を離したら頭上の爆薬が爆発する。そんな状況で、主人公を補佐する第二のヒーローが取った手段とは!?思わず、
「ヴァチェスラフ・ラズベガーエフ(ウマル役、それが彼だ)、キタ――――――!!!」
と叫んでしまうカッコよさでした!
映画としてのおもしろさで言えば、ナイトウォッチよりこちらかな。

@ちぇっそ@