ナイト・ウォッチ/НОЧНОЙ ДОЗОР

これがパンフ

今夜はレイトショーで、今話題となっているロシア発SFX超大作、「ナイトウォッチ/НОЧНОЙ ДОЗОР」を見に、市川コルトンプラザへと行きました!待望の全国公開系ロシア映画、そりゃあ、私に向かって期待するなと言うのが無理!って言うか実は、「期待させてくれよ!」と言う願望の方が強かったでしょうか。日本における、これからのロシア映画の動向を左右するやもしれぬ、試金石でもあるのですから!
とまあ、そんな大上段に構えなくとも所詮映画は娯楽。どれだけおもしろいものを見せさせてくれるか、とくとこの目で拝見させて頂くとしますか!
(物語の背景)
かつて世界では、「光」と「闇」の間で終ることのない苛烈な戦争が続いていた。しかし戦いの無益さに気づいた「光」と「闇」は休戦協定を交わした。そして現代のモスクワ。「異種」として目覚めた者は、「光」か「闇」のどちらかに属すことを強いられ、「光」についた者は「ナイトウォッチ」、「闇」についた者は「デイウォッチ」として、お互いを監視しあいながら世界の均衡は保たれていたのだった。ところが、その微妙な均衡をぶち破る強大な力を持った「異種」が、古くから伝わる伝説に則って誕生した。彼が付くほうに世界の支配権が移る。果たして彼は、「光」と「闇」、そのどちらを選択するのであろうか!
とまあ、いかにも大仰なシナリオ。壮大なスペクタクルを予見させるダークファンタジー巨編です。三部作となるその第一作目では、「ナイトウォッチ」である主人公アントン・ゴロデツキーを中心にストーリーが展開します。
予知能力を持つ彼は、ヴァンパイア狩り(つまり違法を犯した「闇」の者を検挙する役割)に励む日々を送っている。しかし捜査の過程で瀕死の重傷を負ってしまったゴロデツキー。彼が司令部から受けていた命令とは“ある少年”を守ることだった。なんとか少年を守りきったゴロデツキーだったが、実は彼とその少年との間には衝撃的な事実が隠されていた。
と言うのが本編の大筋となります。ハリウッドの人気クリエーターも注目!との前評判も高い作品でしたが、個人的な印象では良くも悪くも「マトリックス以降」の典型的なアクション&SFXであると感じました。
もっとも、そのクオリティ自体は高いものと言えますし、CGの使いどころは非常にアイデアが凝らしてあり、ロシア映画の職人根性を感じさせる部分が数多くあります。
しかしまあ、どこか昨今のSFXディテールの寄せ集め的なところは否めないところ。「これは、アレだ」「あれは、コレか!」と、所々で既視感に襲われることでしょう(笑)
その辺りは、近年(不本意ながら)映画後進国として世界のひのき舞台より遠ざかることを余儀なくされた、ロシア映画の威信を掛けた起死回生の底力を知らしめる為の、一種のテストケースであったと言えるかも知れません。
「ロシアなら、わざわざオーストラリアまで行かなくても、一国で全てがまかなえるぞ!」と言う、その国民性の如く強固な意思表明であったと言うわけです。ま、それはあくまで私の憶測でしかないのですが。
それはともかく、映画の本質こそはストーリーであります。伏線等は非常に上手く練られており、確かに「う〜ん!」と唸らされる場面もあるのですが、いかんせん元々大部な原作を元にして作られたものを、わずか(と言ってしまおう!)2時間の枠に収めること自体無理があったのでしょう。展開を急ぎ過ぎるきらいがあり、伏線が繋がった時、既に視聴者にはそのネタがバレていると言ったことが間々見受けられました。そこら辺、「惜しいなあ!」と思うことしばし。
物語の背景に横たわるキリスト教的モチーフなど、さすが歴史と神秘の国ロシアだけあって、シュールでありながらも暗示的な洞察に満ちた、大変知性を感じさせる重厚さがあります。実際、聖書のパスティーシュをも孕んでいるそうで、やはりその辺りは、実にロシア映画らしいロシア映画であると言えましょう。
何かこう、今までのロシア映画にないスピード感と、ふんだんに使用されるCGに相俟って、その中で急に素朴な感じのするロシア語が飛び出すギャップがおもしろかったです(笑)
ファッションも、徹底的に近未来化された「マトリックス」とは逆行するように、至ってロシアの普通階級であるのが、また一種のカルチャーショックを呼び起こします。最新鋭のCGと、野暮ったい主人公のファッションが同居する不思議。これは「キッチュ」としか言いようがありませんね(笑)
映像の中には、とても残酷な場面が数多く登場します。元々リアルであることを追求してきたロシア映画ですから、例えばマシンガンの銃傷であっても、その鮮血飛び散る様子は実にグロテスクで、この私でさえも嫌悪感を抱いてしまうものでした。
私の場合は、ロシア映画の徹底したリアリズムを知っているので問題ありませんでしたが、普通の神経の持ち主で、「キルビル」の手足千切れ飛ぶシーンが正視出来ない方は、この作品を見るにはかなりの覚悟が必要と思われます。
ロシア発のダークファンタジー。しかしファンタジーとは言え、基本的には現代の通常世界が舞台となっています。その中で「光」と「闇」との間で交わされた調停が危くなり、再び世界が戦火の炎に包まれようとしている。
このなんとも言えない独特の緊張感が支配する世界観は、正にロシア映画独自のものと言えるでしょう。まだまだ物語は始まったばかり。三部作と言われる本作は、戦いの前兆を示して終るに過ぎません。
諸手を揚げておもしろかった!と言えるかは微妙なところ。既にロシアでは第二部の「デイウォッチ」が公開され、大好評を博しているそうです。ま、そちらを期待と言ったところでしょうか。
ロシア映画ファンの観点から言わせてもらえば、いささか歯がゆさが残る作品となりましたが(笑)、今まで味わったことのないSFファンタジーを見てみたい!と言う方は、ご覧になられて損はないと思いますよ。

@ちぇっそ@