フィニッシングストロークが冴える残業

私の航跡を描く

って言いますか、その“最期の一撃”によって見事な残業へと突入してしまったワタクシであります!正に業務が終了すると言う、そんな1分前に掛かってきた問い合わせ電話に出た私・・・って、前にもこんな状況に出くわした近過去が!?(デジャヴュ?)
今回は完全にこちらのシステム上のミス!もちろん私が手を下したことではなく、例によってリップオフ甚だしいピグモンおばちゃんの仕業であったわけですが、そんな不備にかこつけ、自らの非を逆切れで居直ってしまうという、これまた傍若無人な非人間性を露呈してしまう人でなし振りでありました!
まあ、いいや。どうせ私はもうすぐいなくなるんだし。引継ぎ?そんなの、既に替わりの派遣さんが間に合わない以上、正社員に押し付けてとんずらするってもんですよ。でもその社員ですら、「この仕事は理不尽すぎる」と匙を投げかけているくらいですから。
所詮、ポッと出の派遣さんなんかに出来る芸当ではないわけです。システムの不備が多すぎる。マンパワー(人力)に頼り過ぎ。つまりこれじゃシステムの意味が無い。ルーチンを覚えても運用は叶わず。むしろ業務そのものと、システムが成り立っている考え方の理屈が理解出来ない以上、素人には触らせることが出来ない。
このような状況を作り出してしまった営業部門のていたらくと、それを指摘できないでズルズルと課題を引き摺ったしままにしている、システム部門による“自分だけ分っていれば良い”とする自己完結的な非グローバリズムの悪循環が、運営自体の血栓を作り出してしまっていると言うのは、明らかなる対社外的責任問題へと発展するものと思われるわけです。
こんなんじゃ、人生考えるってもんですよ。
なんとかそのような苦境を乗り切り、飲まなきゃやってられん気分が高揚し、社屋一階のコンビニで発泡酒などを我慢できずに買ってしまうワタクシ。駅に着いた頃には既にほろ酔い。竹中直人のように、“ニコニコ顔で悪態をつきながら”、禁煙のホーム上で思い切りキューバ産の煙を吐き出す。
道中で“石油切れ”してしまった片手には、駅前のコンビニで手にした“鬼殺し”を新たなる仲間に、傍で見るにも見かねるほどの“チョイ悪オヤジ”を気取って見せます。
京葉線に乗り込むと意外と空いている。ざっと席にと腰を降ろしたワタクシ。ふと隣を見やれば居眠りをむさぼるビジネスマンが。その膝には、開きっぱなしの雑誌も無造作に・・・。
「SPEED&SMART」と見出し書きされた記事は、どうやらヨットの専門誌である模様。帆を張り、風向きに乗じたカーブのスペクトルを描いたイラストが掲載されるものであります。
なになに、これはつまり基線とな?とても学識のない私に理解できようはずもない、三角関数の方程式か。私はこの“眠れる船長”へと問答を唱えてみる。
「果たして貴殿にとって、ヨットとはいかなるものであるか。時に貴殿が初めて帆を張り、大海原へ出たときの感想はいかに?」
「はい。初めて海に出たときは無我夢中でした。手にはマストに繋がる野太いロープが食い込み、汗と塩水とが渾然一体となり額を伝わるのを感じました。船は私の思う通りにならず、私は何度も荒波に頬を打たれるままでありました」
「しかして貴殿はそれに懲りず、またしても海に出たとはいかなるわけか?」
「はい。初めての航海の後、これほどの苦境にありて、最後岸へ辿り着いたときの爽快感に他なりません。体は火照り、心臓ははちきれんばかりに悲鳴を上げておりましたが、私は確かに海の声をこの耳に聞いたように思えるからです。未知との遭遇。正にこの瞬間に、私は宇宙そのものの胎動を感じたからと言えるかも知れません」
「それでは最後に海と接したとき、つまり一番最近に海へ乗り出したときに、貴殿にいかなる心境の変化が生じることがあったのか?」
「私は既に海を熟知しています。いかなる風、いかなる波をも乗り切れる技術に長けています。しかしそれでも尚、海と言う生き物は私に挑戦を強いて来ます。私はそれが嬉しいのです」
「と言うことはつまり、貴殿は大海原を前にし、その卓越した技術でもってそれらを攻略することにこそ、最大限の喜びを見出すものであるな。すなわち貴殿にとって海と対峙することとは、論理によって大自然を看破することにあらざるか。それともこの地上にうごめく、最大にして最も深遠なる有機物の懐の深さに驚愕するのもであるか。さていかに!」
「ずばり、その両方にあると言えましょう!海は私そのものであります。海を看破することはすなわち、私自身の心情を見抜くこと他なりません。海が映し出すのは照りつける真夏の太陽だけではなく、人の感情をもまた映し出すもの。
心乱れたとき、海は真っ正直にその不安定な揺らぎを反映するのです。心の乱れはそのまま操舵の乱れとなり、次の瞬間に私をその腹の中へ飲み込むでしょう。だから私は自分自身をコントロールします。自らの弱さを克明に分析し、それを克服することに喜びを見出すのです。
そして海は、決して数値によっては測れないもの。飼いならされないものにこそ感じる美学。人は手にすることが出来ないものにこそ、最大限の賞賛を与えるものです。しかもそれが一瞬であればあるほどに!
海と時間とは一緒のものです。確かにそこを通ったのに、後に残る航跡は瞬く間に消し去られてしまいます。時間と同様、わずか一瞬、私がそこに存在した時だけ“空間の歪み”を発生させますが、その後はきれいさっぱり消えてなくなる。私がそこにいる間はその存在を認めてくれ、しかし一旦いなくなればその痕跡を消し去ってしまう。面の中にいる、ちっぽけな点と言う私の存在。誰もいなくなった後のその完全なる静寂を思うことほど、海に対する愛おしさを感じずにはいられないのです!」
と言ったところで、私の他愛ない白昼夢はこれにておしまい!船舶など全く操縦したことのないワタクシ、ちぇっそでございます!明日からはもっと現実的に生きましょうね!バイナラ!

@ちぇっそ@