エピローグ −深夜の雪中行軍−【寝るな!死ぬな!蘇れ!】

生きて拝めた談合坂の朝日

と言う訳で、随分と長くなってしまったツアー雑記もいよいよ佳境に差し掛かって参りました!段々とこの長文が楽しくなってきてしまい、全くまとまらない言語の羅列と化しているところですが、この完璧なる自己満足の雑文にとりあえずの締めくくりを設けようではありませんか!(予告したタイトルとちょっと違うとかってクレームは受け付けない)
11時半だかそこらに名古屋を出発した我々。年末集中工事のため、東名で交通規制が敷かれている関係から、帰りの行程は中央道を選択。ところがこれが悪夢と、そして人跡未踏の悪路へと我々を誘う、極寒のラビリンスへの入り口であったのです。
この日、天気予報でも言っていた通り、折からの雨が夜半過ぎには雪へと変わっていました。道路事情には疎い私なので正確な記述が出来ませんが、最初に訪れたインターで早くも門前払いを喰らいます。なんと高速道路上で事故が発生、通行止めとなっていたのです。仕方が無いので、次のインターまで下の道を行くことにしました。
ところが次ぎのインターでも、事故の影響かまだ立ち入り禁止となっており、REEX一向をなかなか高速走行へと突入させてくれません。ここら辺で何やら雲行きが怪しくなってきた感が。
予感は的中。降り止まぬ雪は大粒になって来ており、あたり一面に薄化粧をほどこしております。気温はぐんぐん下降し、外気温はマイナスの表示を差すところまでやって来ました。やっとのことで辿り着いた次のインター、しかしそこでまた信じられない事態が!
「路面凍結のため進入禁止」
遂にこの時がやって来ました、これぞ一番恐れていた事態。事前の週間天気予報からこの事は予測できたのですが、まさかこうして、実際にこの身へ降りかかることになろうとは!最悪の事態が頭を過ぎります。朝にはレンタカーを返さねばならないし、私は午後から仕事。とは言え、このような状況ではそれも間に合わないか、と言った深刻さをかもし出して来ました。もっとも、仕事なんて私一人いないところで、どうにでもなるもんなので良いのですが。
最新鋭ナビを駆使し、運転手ジョージ氏はあらゆる方面から抜け道を探し出します。ある時はウンともスンともしない、膠着した渋滞からひらりとUターンし、沿道のわき道へとすり抜ける。またある時はあえてナビを無視し、自分の感を頼りに急勾配の山道へと乗り入れます。
こんなところが主要道路へ繋がっているのか?と言った、不安と緊張感募る決死の強行軍。とまあ、そんな中で訪れる驚くべき瞬間。峠越えの険しい林道から眺めた市街の美しい夜景と言ったら!これこそ「100万ドルの夜景!」しかし一歩間違えば谷底へ転落と言った、急カーブ連続する難所。“景色も凄いが、道も凄いねぇ!(言ったのは俺か)”なんて、半ばヤケクソになってハンドルを握るジョージ氏でありました!
ホントに、良くもまあこのような雪道で車が走ったもんだと感心するのは、不足の事態に備え“スタッドレス”を履かせて来たジョージ氏の機転によるものだったのです!全く、使用前/使用後、いや違った。この計画性と行動力、今回の旅では本当にジョージ氏の活躍が目立っておりました。このツアーの一番の伝説は、正にアンタだ!
しかしさしものスタッドレスと言えど、凍りついた轍にタイヤを取られることもしばし。でも仕方ありませんよ、こんなの、例えチェーン履いてたって、例え地元の住民だって自ら進んで運転するような道の状態じゃないですから。雪国出身の私は、そこら辺はよ〜くわきまえておりますから!(ウチのかあちゃんなら、絶対に車出したりしないっすよ、こんな日に!)
山道を登った位置にあるインターの手前で完全渋滞。待ちきれなくなった車両が、反対車線を登って先頭へと向かって行きます。「無茶するなぁ」と思いながらも、我々も便乗。(どうせ高速から降りて来る車なんていないッスからね)しかし!120゜カーブ手前で、前方の車が立ち往生。2つ先で、ノーマルタイヤを履いたマイクロバスが、坂を登りきれずに完全スリップしてしまっていたのです!
これで2車線封鎖。見事などん詰まりとなり、身動き取れない状態。このまま朝まで、路面が溶けるまでか、もしくはレスキューが来るまで足止めか?なんて絶望的な見解が脳裏を駆け巡ります。この時点で、完全に仕事の事は諦めた私でありました。
我々の前に止まっている大型ワンマンバス。良く見ていると、傾斜した坂の内側へと徐々に滑っているではありませんか!内側の車線には、別の大型バスが止まっています。その巨大なタイヤにチェーンを掛けようと、必死になっている運転手目掛け、外側から距離を縮めるワンマン。
運転手が気づき、ストッパーをタイヤに噛ませてはみたようですが、じっくり見ていると、太陽の傾きと同じくらい鈍磨な速度ながら、やはり確実に内側へとずれて行きます。
ああ、恐ろしい!このままだと、外へ出て皆で押し返さなければいけないのか!?しかし前方の様子を見に行ったジョージ氏の談では、もはや人ですら坂道で立っていられないとのこと。ああ、じゃあ無理!かっこつけて出て行っても、そんな大型に押しつぶされてお終い!自分の身の安全に寄与することにします。
さて、そんなにっちもさっちも行かない状況ではありましたが、なんとか後続の車両が退いていったお陰で、我々ももと来た道を引き返すことが出来ました。脱出に成功したのは良いですが、やはり気になるのは、あの横滑りを始めたバスの行く末。こういうときって、一体“何保険”が幅を利かすんでしょうかね。まあ、人のことなんで知〜らないっと!
このようなことがあり、結局、「行けるとこまで国道20号線で」突っ走ることに決定。それにしたって、またどこで何が起こるか分かりません。無理せず、安全最高速度(せいぜい30〜40kmですよ、そりゃあ)で走行しておりました。
でぇ、やっと高速に乗れたのが甲府辺りだったでしょうか。いや、とにかく、とにかく壮絶な旅であったことがお分かり頂けましたか!?生きた心地がしなかったのはもちろんですが、下町妖怪集団を騙る我々REEXが、それこそ遭難した異郷の山奥で“のももけ”と化すやもしれなかった、恐怖のドライヴの一部始終をご覧頂きました。
恐らく12時間近く掛かったでしょうか。終点、大塚まで辿り着いたころには、時刻は既に10時半になっておりました。私はさらにそこから電車を乗り次ぎ、千葉へと戻って行きました。12時にアパートへ到着。2日振りのシャワーを浴び、小一時間もした頃、またぞろ会社へと向かったわけです。
ワーカホリックっすね!もちろん、その日半日は使い物にならなかった私でありますが、なんとかなんとか仕事をやっつけてきました。だって、職場のデブねえさんの方が使い物にならないんですもの!と言ったわけで、“仕事が済むまでがツアーだ!”の精神で、満身創痍、“一日で2度目の帰宅”まで乗り切ったワタクシでありました。
ジョージ氏には本当に感謝!ハンドルを握る頼りがいのある2本の腕。運転する後ろ姿は威厳に満ち、自ら先陣を切って敵陣へと突入する、豪傑ピヨートル大帝を思わせるものでありました!カッコイイ!キスしたい!(しません!)
とまあ、ある意味、貴重な体験が出来た今回のツアーでした。

@ちぇっそ@