ロードブログ

今日の私は、一体何歩あるいたのだろうか。
一週間が無事に終わり、気の抜けた週末の倦怠感に突入するとき。残業の長針は午後9時半を数え、会社ビル1階のコンビニで、ビールロング缶を買い込む。
さて今日は、東西線葛西駅まででも歩いてみようか。
最寄のバス停より、5駅進んだところが葛西駅だ。歩いて歩けない距離ではないだろうと思った私である。
後々、深夜残業などで居残った場合、お世話になるかも知れない葛西駅までの道のりなどを、この際だから勉強しておこうと思ったのだ。
ただ、この道が続く先は、単に退屈な直線道路だけでなく、昔日の私にとって、思い出の道へと続く過去への回想でもある。
先ずはキューバタバコを一服ふかし、いよいよロング缶のプルトップへと手を伸ばす。
ああ、このひと口が辞められない。長い旅路が予想される中、ささやかな旅の道連れとなってくれるアルコールに感謝。
歩き始めは私がほとんど知らない道である。会社周辺の状況をチェックしながら進む。
端から期待していなかったが、やはりこの周辺には大して目ぼしい物件はない。昼食のバリエーションを増やすための定食屋や、がんこなオヤジが居座ってそうなこだわりのラーメン屋すら見当たらない。
所詮東京の外れに位置する土地だ。かろうじて地図に載っているだけで幸運と言えるのかも知れない。(以前、舞浜の千鳥町にあった事業所は、ぎりぎりで地図から外れていたのだ)
てくてくと歩いて行くと、なにやら公園がある。もしかしたら、夜酒を楽しむ穴場スポットになるかもと思い、寄り道してみるが意外と奥行きが狭く、素通りして行く通行人も多いと予想されるベンチで、そんな悠長なことは言ってられそうにない。そうそうに退去する。
まだ開発が完全には進んでいない地域なので、敷地面積のあるファミリー向けアミューズメント施設などが建っていたりする。まあ、到底私には縁のない建物だ。
これでバス停を2つほど通り過ぎただろうか。まだ会社を出てから、たかだか15分足らず。これなら葛西駅までは歩いて歩けない距離ではないばず。
疲れが出て、少しもつれてきた足にも活力が蘇ってくる。
しばらく進むと、セブンイレブンが見えて来た。と言うことは、今回の第一目的である、“あのビル”へ近づいたと言うこと。
それは、私が以前3ヶ月だけ勤めていたことのある、警備会社が入っているところだ。
随分としょぼい会社で、もしかしたら既に潰れるか、移転していると思ったのだが、どっこい生きていた!
ビル壁に掲げられた会社の看板が燦然と輝いている。そのすぐ下に学習塾が入っているのも昔と変わらない。
さてさて、あのおっさんたちは元気にしているだろうか。当時40過ぎにして、ギャル風メイクを施し、ケバイ雰囲気を醸し出していた女社長は、相変わらず週末にはクラブ通いをしているのだろうか。
もっと近づいて見てみようと思ったが、逃げるようにして会社を立ち去った私には、古傷を思い出させる古い友人に会うのは少々気が引けたので、ビルの様子だけを窺って、すぐ様歩を進めることにした。
裏手には会社の駐車場があるんだよな。ああ、あったあった。
約一月の間、ここから朝の6時に、神奈川の溝の口まで送ってもらってたんだよなあ。
この会社まで辿り着けば、後は昔通いなれた通勤路。
あのときは、ヘルメットやら警備灯やらの重たい荷物を背負っての亀の歩みであったが、今夜の私は身軽なフロッグのような軽装だ。
足取りも軽く、さっさと駅方面へ向かう。
警備会社ビルを後にした私は、すきやに辿り着いた。もちろん、ここでも良く夕飯を食べて帰ったもの。しかし今日は素通り。
大通りから枝分かれする側道。この信号は、会社への道を急ぐため、しょっちゅう無視して通ったものだ。
もう少し行くと公園があるはず。ここだ、やっぱり。
仕事を終え、体力に余力が残っているときは、わざと遠回りしてこの公園内をつっきって帰った。
おっと、このいかにも怪しげなアダルトビデオ屋も、いまだ健在なのか。
以前はでかい荷物をしょっていることに躊躇があったが、今日は思い切って立ち寄ってみようじゃないか!
ドアを開けるといきなりブザーが鳴る。何か防犯ベルに引っ掛かる品物を持っていたのだろうか。いや、何も持ってないぞ。
どうやら店内に出入りする際に必ず鳴る仕組みらしく、私のほかにもう一人いた客が、きちんと会計を済ませて出て行ったときでも、同じようにブザーが鳴っていた。
なんともはた迷惑な設定となっている。
店内が例によって、神保町辺りのアダルト専門店みたいなマニヤックな雰囲気。しかし売れ筋の新製品コーナーなどで満足する私ではなく、更なる深みを求め、店奥へと突き進んで行く。
すると、あるではないか。私好みのマニヤックフェチのコレクションが!
まあ、その詳細については時にリアルになり過ぎるので語らないが、危く散財しそうになる心を抑え−もっとも金もないのだが−今日のところは泣く泣く何も購入せず、店を出た。
ふ〜ん。意外と広い店内だったことに驚いた。
ほどなく駅に到着した。
すっかり先ほどの店で時間を潰してしまったので、駅前のブックオフに入ったときには、ものの数分で閉店時間の訪れを告げる「ほたるの光」が鳴り響く状態だった。
と言ってもまだまだ11時である。ちょっと早い店じまいじゃないか、きょうび片田舎の居酒屋でも、こんな早い時間でのラストオーダーなんて取らないぞ。
腹が減ったので何か食おうと思ったが、ここでも目ぼしい飯屋は軒並み閉店している。どうしても何か食って帰らないと、電車の中で切れそうだったので、仕方なしに吉野家で済ますことにした。
良い街だと思ったが、結構使えないところだとレポートの内容を訂正。いや確かに、居酒屋こそはたくさんあるのだが。
ホームで電車を待っている。後ろのベンチに座っている若いサラリーマンを見ると、同僚たちとの飲みで潰れたのか、ぐったりとうなだれている。
更に注視してみると、足元には大量の嘔吐物が。
酔いが回って、自制の効かない体が勝手にツイストを踏んでいる。きちんとした身なりで、しかしピカピカの革靴の底で、嘔吐物をタイルにシャッフルしている。
さすがに見るも気分が悪くなってきたので、視線を線路に戻し無視を決め込む。コイツが同じ電車に乗り込んでこないことだけを祈る。
幸い例のヤツは相変わらず地団駄踏んだまま、ベンチでグロッキーになっている。
込んだ車内。やはりメインストリームは、人と言う名の蛆虫が多すぎる。この状況に遭遇するときは、いつも「世界の中心からことごとく崩壊した方がいい」と、思えるのが道理である。
いくら乗り継ぎのタイミングが悪かろうと、今度からは絶対に京葉・武蔵野線方面を利用しようと心に決める。

@ちぇっそ@