なるほど

「白い肌の異常な夜」という映画を見ました。もちろんビデオですけどね!
主演はクリント・イーストウッド、監督はドン・シーゲル南北戦争時代、南部の森に佇む女学校に、一人の負傷した北軍兵士が運び込まれる。女だらけの邸にもたらされた“男”という存在。にわかに降って沸く、男と女の憎愛劇。規律が破られたその時、凄惨な仕打ちが下され、物語は衝撃の結末を迎えるのであった。
単純な戦争映画でも、史実を扱った歴史物語とも違う、なんとも異色のサスペンス映画でありました。
信仰と戒律、清純と規律が支配した当時の南部アメリカの様子は、いわば「南部ゴシック」として称されるものです。舞台となる女学校は、敬虔なカトリックの教えに忠実に従っており、例えて言うなら、女教師はマリア、生徒たちは穢れ無き天使といったところでしょうか。
さあそこへ突如、筋骨逞しいマッチョマンが現れたから一大事!「汚らわしい」と嫌悪感を表す者や、彼を独り占めしたいと、よこしまな考えを起こす者まで様々。正に女学校内部で、女の執念が渦巻くこととなるのです。
嫉妬深い年増の女教師は少し脇へ置いておきまして(笑)、男を前にして急に色気づいてきた女学生は、その清純さとは裏腹な湧き出るエロスを感じさせます。これぞロリータ、正に「ゴシック・ロリータ」を地で行くものであります。
しかし、いわゆるヨーロッパの中世に端を発するゴシックとは弱冠趣を異にしており、ここでいうゴシック・ロリータとは、通常オタク系の人たちがイメージするものとは違います。佇まいはもっと質素で、精神的、観念的なレベルにおけるゴシックであるのです。“様式的なゴシック”といったものとは、ある意味対極にあると言えるでしょう。
信仰に対して敬虔であるが故に、精神の純粋さに対する背徳行為と言うものが、その禁断の度合いを高めるのであります。リアルであり、内側から堕落してゆく様子が狂気に満ちており、そしてより淫らであるのです。
えー、というわけで、了解です。了解しました。あ、いや。一体何のことか分からない、とお思いになる方も多数いらっしゃるかと思いますが、ちょっとこの作品を見るに至った経緯がありまして、それで予習がてらに見たところ、なるほどそういうことか!と合点がいった次第にございます。
まあこうして、単に作品紹介するだけなら問題ないですよね?(誰に了承とろうとしてるんだ、俺は!?)事情を飲み込めない方(まあ大半でしょうが)は、余計な詮索はしないように。
というわけで、それこそ“異色”の名に相応しいカルトな作品だったのですが、大変面白く拝見できました。以前ご紹介した「魚と寝る女」と同様に、「痛い痛い」場面も用意されていますので、変な映画が見たい向きには正にうってつけの怪作です!

@ちぇっそ@