書ききれなかったライヴと映画のレポ

ではでは、先日の病気マン公演でご紹介できなかったバンドさんについてのレポートです。
この日3番手に登場したのはその名もいかがわしい、クリトリス・ガールズ。うーん、なんと言いますか、一言で言えばチープなジャンク・バンドといった感じでしょうか。
女性バイオリニストを含む5人組。何か期待させてくれそうでしたが、これがなんともダメダメなバンドでして、「アイタタ!」と思いながら鑑賞。もっとも、ダメ人物はリーダーのG,Vo氏だけなのですが、嘘か真か隔週で精神病院へ通っているという彼が、バンドへ出す指示がもうハチャメチャなのです。
もちろんMCもメチャクチャ。「リハ不足でどうもすみません!」「アハハ!今の酷すぎですね、もう一回最初からやります!」とか。狙っているのか、本当なのか危い均衡の上に成り立つ不文律。
思いのほか早く進行しており、病気マン終了時点でまだ7時。「じゃあ、8時までやっていいですかぁ?」と言って、ライヴハウスが「Ok」を出した時には少しウンザリしてしまいました。そしてホントに1時間も演奏してしまったのです。
他にプログレッシヴDJもやっているという彼の作る曲は、確かに少しインテリジェンスに溢れているような気がしますが、演奏自体は初心者レベル。歌詞も「あぁ〜、サクセぇ〜ス!」などと叫んでおり、なんだかイカレた雰囲気。
でも最後の最期に、「ロシアの映画監督、タルコフスキーに捧げる曲です。『の“す”た“る”じ”あ“ァ”〜!』」(濁点はダミ声)と言って始まった1曲で私は全てを許しました。まあ、もしかしたら何回か見るうち、彼らのひととなりが掴めてこのグダグダな味を楽しめるようになるのかも知れませんね。(あくまでポジティヴ志向で!)
そしてラストに登場したのはパイカルという、泣く子も黙る超絶技巧バンドでした。
ドラム、ベースの洋楽器に、和楽器のメンバー2人が加わります。ひとつは胡弓(あ、hp見たらニ胡となってますね)と、もうひとつは三味線のような、でも大きさから言うと三線ぽいのですが、見た限り蛇皮ではありません。便宜上三味線としますが、この方がリーダーの4人組になります。
バンドの準備中、待っているお客さんを飽きさせまいと、リーダーが“語り”を入れます。その語り口は正しく“弁舌氏”のそれであります。
「え〜、聞くところによるってぇと。。。〜といった次第にござい」などと、巧妙にして軽快な実になめらかな饒舌で、演目前の前説を盛り上げて行きます。なんだかちょっと期待しちゃうじゃないですか!
きっと“落研”出身なのかな?なんて勘ぐりには及ばず、どうやらリーダーの方は、もともとチンドン屋を意識して音楽を始めたとのこと。ジャパニーズ・エンターテインに徹した味のあるやり取りは、聞いているだけで心地よい響きがあります。
一旦トイレへと退却した私が戻ってくると、リーダーの方がなにやら歌を歌っています。浪曲のような老練なこぶし回し。一通り歌い終わり、「じゃあ、準備がまだのようなので、もう1曲。。。なぁ〜んて、後は知らないんですがね。あ、でも、エチオピアの曲なら1曲。。。」
「○×%▲※☆&$#◆♭;@〜〜〜!!!」
なんとも芸達者ですね!さあ、ほどなくして演奏開始。やはり先ほどの音楽的素養然り、東洋的で、更に言えばポリネシア的(?)と言える、エスニックでエキゾチックな音階が奏でられます。最初、ゆっくりとリズムを刻み始めたドラムも徐々に盛り上がって来、変則的なリズムパターンに移行して行きます。
二胡の調べも天空を舞う羽衣の如く、ライヴハウスの中を縦横に飛び回ります。
リーダーは未だ演奏せず、穿いていたジーンズを脱ぎ捨て、なにやらスカート姿(?)となり、頭には手ぬぐいでほっかぶりをし、一種異様な踊りを始めております。祇園?それともベリーダンス?はたまたガムラン?妖艶な雰囲気を称えたその踊りに、男性とはいえ、なんとも言えぬ色気すら漂っています。表現力とは、正にこのようなことを言うのですね!
さあそれに連れてバックの演奏も盛り上がって行きます。やはり同じドラマーとして注目してしまいますね。巧みなダイナミクス・コントロールで繰り出される、目の覚めるようなアクセントが炸裂。そしてその後に続く、火の出るようなドラムソロ!
完璧にチューニングされたスネアドラムからは、リズムに色合いを添えるゴーストノートや、乾いた音色のドラムロールが途絶えることがありません。この方、素晴らしいです!もしかして、“あの”吉田達也先生のとこでローディをしてたことがあるんじゃあないですか?!と思ったのは、単に見た目がそっくりだったからであります!(くれぐれも当人ではありませんのであしからず)
ギターの方も、ジャジーな7thから東洋音階に至るまで、熟練したテクニックを遺憾なく披露しておりました。切れ味鋭いカッティングが実に心地良い!
そして前半終了。ここで踊ってばかりいた(笑)リーダーの方が、「じゃあ、アコースティック・タイムとうことで」と始まったのは、新潟へ行ったときに教えてもらったという民謡でした。
方言を交えながら曲紹介。そのMCを全て理解したのは、新潟からやって来たグラインド刺客、ちぇっそ・もっさ・ばうんだりぃ氏だけだったでしょう!(何を隠そう、この私だ!)
聞きたくもないでしょうが、私も地元ネタを持っており、エアメタル・パフォーマンスにおいて新潟流盆踊りの影響を取り入れた振り付けができるのです!ちなみにそれは、今や英国ロックの救世主たるバンド、「ダークネス」の曲で発揮されます!
そして後半戦。もちろん後半も打つ手緩めず、緩急織り交ぜた変幻自在なインプロヴァイズで、見る者をすっかり魅了したのでした。40分ほど演奏していたでしょうか、しかしまだまだ見足りない。どうせなら、前のバンドが1時間も演奏するより、こちらのバンドに2時間の演奏時間を与えて欲しかった!
そんなわけで、落差は激しかったですが、この日のライブレポートを全てお伝えいたしました!

<おわらない物語 〜アビバの場合〜>
渋谷CINEMA RISEで上映中の「おわらない物語 〜アビバの場合〜」を見てきました。
アビバの従姉妹ドーンの葬儀のシーンから物語は始まります。
彼女はレイプされ妊娠してしまい、自分の分身がこの世に生まれることに耐え切れず自ら命を絶ちました。そんなドーンを見て、アビバは自分こそは子供をたくさん生んで、たくさんの愛情を注いであげようと誓うのです。そして早く子供が欲しかったアビバは、両親の友人の息子ジュダと愛を交わし妊娠します。しかしそれを知った両親は猛反対。アビバに強制的に中絶手術を受けさせましたが、その境遇に耐え切れなかったアビバは家出をしてしまうのです。
一見、感動のヒューマンドラマと言った感じですが、配給があのアルバトロスであるだけに一筋縄ではいかない作品です。私もオフィシャルHPを見て予備知識を得ていなかったら、「なんだこのいい加減な映画は!」と憤慨したに違いありません。何故なら、主人公を演じる少女アビバ役には、なんと8人もの役者がエントリーしているのですから。
「なんだ、別に成長する過程を追ったのなら、8人いても不思議じゃないじゃないか」と思われるでしょうが、そうではなく、顔も似ておらずしかも肌の色も関係なく役者が入れ替わって行くのです!
前に出た役者が再び登場しても来ます、もちろん同じ役で!はっきり言って映画制作の常識を打ち破る、破天荒な演出であります。しかしながら、これはもしや俳優をキャスティングするに際して、各人のスケジュールに左右されることなく製作を進めるにあたり、数人の俳優を配置し、予定の空いた役者をその都度起用すると言った、“派遣的役者登用”という新たな指標を示した作品かと思いましたが、もちろんそんなことはありませんよね。
正に当映画のメガホンを取った、鬼才と呼ばれるトッド・ソロンズの成せる業であると言えましょうか。
私がこの映画を見ようとしたきっかけは、家出したアビバを保護した施設でフリークスの集団が登場するからです。それこそトッド・ブラウニングではありませんが、腕なし少女や、アザラシ少年、または小人や肺を患った少年など一緒に、アビバが歌い踊る様子はこの世界で起こっている別の一面を垣間見せてくれます。
正常な者しか認知されない、結局未だ差別主義的な社会の中で、けなげに生きる彼らの生活が映し出されています。しかし彼らは決して悲観的なわけではなく、人生をより良いものにしようと、むしろ自らの境遇を楽しんでいるかの印象を受けます。弱点を武器にして生きるというわけですね!
でも実のところ、私は単純にフリークス好きなだけであって、彼らに特別の同情心を抱くこともありませんし、逆に偏見のようのなものも持っていません。なんと言いましょうか、私の中ではごく普通のことなのです。(まあ、それは幼児体験に基づくものですが)
それはともかく、この中で特に、白痴で盲目の少女がとても可愛らしかったですね。いえ、くれぐれもロリコン趣味があって言っているのではありませんので、あしからず!
単純に感動したとは言い切れない作品でして、なんと言うか、やっぱり“変な映画”であることに変わりありません(笑)。カット割りとかのタイミングも普通じゃないですし、映画制作のセオリーに則らない、独特な作品であるとしか言いようがないですね。
悪い話ではありませんが、意外と真剣に見ない方が公平に判断できる作品かと思われます(笑)。映画を知る人ほど困惑する映画ですね。そう言った意味で、かなりカルトであります。

@ちぇっそ@