痛いのはどっちだ?

文学的〜下世話に至るまで、およそ芸術と名のつく作品を2つほど拝読、拝見したので、ここらで少し感想でも述べておきましょうか。
先ずは、20歳で芥川賞を受賞し、一躍時の人となったことも記憶に新しい、金原ひとみ「AMEBIC」を読みました。個人的には芥川賞より、ヒューゴー賞ネビュラ賞ローカス賞フィリップ・K・ディック賞といった方に興味がそそられるのですが(単にSFオタクですな)、こんな年端も行かぬギャル風情に一体何ができるものか?と。
まあ、別にそんな挑発的な態度で臨んだわけでは決してありませんが、純粋に興味を持ちまして、ちょいと立ち読みしたら「面白そうだな」と思い、衝動的に雑誌小説「すばる」などを買ってしまったわけです。
220枚の中短編。不可解ながら、心の叫びを素直に表したような、出だしの文章で一気に引き込まれてました。薬とサプリ、そして少々の水だけで毎日を過ごす、編集/ライターを生業としている女が主人公。別の女との結婚を間近に控えた彼氏と、不倫というか浮気を繰り返しています。
赤裸々な“ブログ”を覗いているかのような痛々しさがありました。「アイタタ!」などと思いながら、主人公の彼女がどれだ病んでいるのか、どこか怖いもの見たさで、新たなページをめくって行く楽しみがあったでしょうか。だからと言って、別に私はこの主人公に共感できるということはありませんでしたが。
最後はちょっとサスペンス風になり、きちんと“小説”しておりました。この曖昧模糊としたラストは結構お気に入りです。
続きまして、現代ヘヴィロックの鬼才ロブ・ゾンビが、初めてメガホンを取ったB級ホラーの怪作「マーダー・ライド・ショー」についてお話しましょう!
正直なところ、内容そのものはホントにB級。ストーリーなんて語るに値しない!とまでは言いませんが、正にホラーのためのホラー。悪趣味全開の痛快娯楽作でありました。
「スポールディングの化物館」へやってきた若者たちが、執拗で陰惨な殺人事件へと巻き込まれてゆくという、とっても分かり易い展開であります。
古典ホラーから、シリアルキラー・コレクションに至るまで、監督ロブ・ゾンビの頭の中で繰り広げられる映像世界そのままのような、腐肉、鮮血飛び散る極彩色のゲテモノ・テイストが満載です。
意外と冷静に見ていた私は、「ストーリー事態は結構つまんねぇな(笑)」などと思いながらも、映像が持つ独自の色彩感覚に引き付けられ、意外や飽きずに見ることができました。情報量の多い画面は、キッチュで味のあるディテールでまとめられており、眺めているだけでそれは楽しいのです。
余最後に余談ですが、終盤眠くなってしまった私は、ちょいと15分ほどひと寝入り。起き出してから、シャワーを浴びて目を覚まし、さあ仕切りなおし!とばかり、再生ボタンを押したなら、なんとものの5分で本編が終了してしまいました。ああ、こんなことなら寝なくても良かったのに。
そんなわけで、“痛みに耐えて”堪能した、世界をまたにかけたゲイジツ作品の感想でした!

@ちぇっそ@