俺流、韓流ブーム?!「魚と寝る女」

先日の「オールドボーイ」に触発されたかどうかは分かりませんが、またもや韓国映画を見てしまいました。とある「痛い系」好きな友人(笑)が探していた、「魚と寝る女」がレンタル屋にあったので借りてみました。
これもある意味衝撃的でした。2000年のヴェネチア映画祭で失神者続出という、そのエキセントリックなシーンにより話題独占!正に衝撃のエピソードを孕んでいるわけですが、それより個人的に驚いたのは、この作品が実にアートしていたからに他なりません。
主人公は、釣り客の集まる湖を一人で管理している女、ヒジン。彼女は今日もまた一人の釣り客を案内します。浮気をした恋人を惨殺してしまい、罪の意識に苛まれたヒョンシクという男。湖面に浮かぶ小屋舟へと、ボートに彼を乗せて行きます。
実はヒロインのヒジンは一言も喋りません。彼女は障害者なのか、それとも何らかの事件に遭遇し、そのショックで言葉を話さなくなったのかは、最後まで明らかにされることはありません。この辺りが、作品に更なるミステリアスな印象を与えます。
そして心に闇を負った者同士が、お互い惹かれあう事になるのは必至だったのでしょう。この物語は彼ら2人のラヴストーリーであります。しかしそれは、引き返すことのできない奈落へと突き進む、悲劇の始まりであったとも言えるでしょうか。
とにもかくにも、舞台となるこの湖のロケーションが素晴らしいのです。そこには水と森しかなく、聞こえて来るのは遠くで鳴く鳥の声と、桟橋にヒタヒタと打ち付ける水の音だけ。
ヒジンがヒョンシクを送り届ける場面でも、お互い交わす言葉はなく、ボートのモーター音と、舳が水をかき分け波を作る水音だけなのです。
昨今の演出過多、サービス精神旺盛な韓国映画において、これほどまでに“間”を大事にした作品が撮られていたとは!冒頭のシーンだけでシビレてしまいました。音楽もほとんど挿入されず、画面に映った風景と役者の表情だけで、ひたすら物語りに深みを与えて行く。正に“活動写真”、全てが絵になるのです。
リアルに描かれる人間模様。釣りに飽きた酔客が、売春婦を呼び込むこともしばしば。木の葉のように浮かぶ小屋舟は、男と女の情欲が入り混じった、湖上の遊郭でもあるのです。
ヒジン役のソ・ジュンがまた素晴らしく、すれた雰囲気を持ちながらも、愛に純粋に生きるその姿は、どこか梶芽衣子のような佇まいすら感じさせます。この作品にこのような表現は似つかわしくないのですが、思わず「カッコいい!」と、うなってしまうこと間違いなしです!
“魚と寝る女”は、“魚のような女”でもあります。詳しくは語りませんが、彼女の存在自体がまた韓国の民話のようでもあって、幻想的で不穏で、何か得体の知れない恐ろしさを持っています。
もちろん作風は違いますが、タルコフスキーを見たときのような、アカデミックな気分になりますよ。いや、ホントです。
でぇ、その“衝撃”の場面、作中多くはないですが、その分凝縮され、「リアルに痛い感じ」です(笑)苦手な人はとことんダメでしょうね。個人的にはさほどキッツイ感じは受けなかったのですが、まあ、見ていてあまり気分の良いものじゃありませんね(笑)
恋の行方も、問題のシーンも共に「痛い」作品でありますが、個人的にはかなりお気に入りの1本であります。今までこんな韓国映画、見たことない!と言ってみたい方、レンタル店で見かけたらぜひ挑戦されてはいかがでしょうか(笑)

@ちぇっそ@