朱に交われば

突然の夕立。
私はまだ会社にいて、そろそろ帰り支度を始めようとしていた時だった。突如曇り始めた空から、パラパラと雨粒が落ちてきた。
退社時間を遅らそうとも思ったが、むしろ本降りになる前に帰ろうと、早々に会社を後にした。傘は持っていない。
大粒というほどではないが、勢いのある雨の玉が、私の顔をパシッ、パシッと打つ。線路の高架下に逃げ込むが、風向きが悪く、雨をしのぐにはまるで役に立ってくれない。
段々と強くなる雨脚に苛立ちが募ってくる。空に向かって悪態を突く。
駅に近くなった頃、私の前を歩く2人のOL。ローライズのハーフジーンズに、もう一人は格子柄のタイトスカート。
ピタリとフィットした、むちむちの臀部へ視線が泳ぐ。足早に改札へ向かおうとする私の行く道を、2つの大きな桃が通せんぼしている。
ホームへ入ると、雨はいよいよ本降りになっていた。暗澹たる気持ちで、乗り換えの南船橋へと到着する。
数分の待ち合わせ。階段を上りきり、ホームへ顔を出してみると、空が鮮やかな朱色に染まっていた。しかし雨は依然として、その勢力を弱めてはいない。
なんとも不安定な均衡の元に築かれている、光と嵐の共演。夕日を反射して、赤く尾を引く線路のカーヴが、狐火の軌跡の如く地平へと消えてゆく。
血の色の雨が降り、建物の外壁は灼熱の業火で真っ赤に染まる。さながら、世界の終わりの色とでもいった印象。
破滅願望が耐えることの無い現代人。私はこうして、年に何回か現れるこの恐怖の景観を目にして、自らが抱く破滅志向の自尊心を満足させているのだろうか。

@ちぇっそ@