死して屍、拾う者なし

思いの他元気に深夜残業をこなした私。データ処理後、伝票セットなる単純作業も鼻歌交じりで快調そのもの。「肉体だけならまだまだ20代?意外といけるじゃん、俺って」などと思っていたのも束の間。午前4時から数時間の仮眠を取り、朝9時からの通常業務へと移行した私はもはや虫の息。
半ば屍と化した精神は、重いまぶたを吊り上げておくことが出来ず、リクライニングしたチェアーに身をもたげ、気がつきゃ1時間経過。また意識が戻れば1時間半経過と、一日の大半を眠りこけてしまいました。
更に私の脇では、こちらも憔悴しきった上司が、新宿高架下に陣取る浮浪者のごとく、ダンボールの寝床に力なく伏しております。
2体の屍が社内で一番天国に近い部屋へと横たわり、人知れず、ハゲ鷹がその死肉をついばみに来るのを待ち受けているかのようでした。
骨など誰も拾ってはくれず、長い年月風化に任せるがまま、潮風に乗って海の底へと堆積し、泥と一緒に八目うなぎの腹へと収まることでしょう。
どうせなら隣りの肥料工場の原料として再生し、やがては魚沼の水田へと出荷され、遥か生家のべとの中へと埋葬されたし。などと、昭和デカダンの心象を抱いたりもいたしました。
日中はほとんど自発的な意識なるものが発生せず、本能と条件反射に任せるようにして帰宅した頃になってやっと自意識が芽吹きはじめ、急に飲みたくなったライトボディのワインなどを飲み干します。
前日に大分綺麗に片付けてあった部屋だけが、ささやかな救いだったでしょうか。おもむろに、見たくなった映画などを受像機で映してみたり。
「2999年 異性への旅」
いささか風変わりなSF風味の恋愛コメディー。ユルい。ユルいこの感覚に、酩酊した気分の癒しを受けます。
この日の終わりに「ヘルダーリンの夢」を聴きながら、柔らかい綿の芝生へと撃沈いたしました。

@ちぇっそ@