こんな本も読んだり

ミッチ・カリンの「タイドランド」を読み終えていました!
主人公は、ブルースシンガーの父とそのグルーピーだった母の間に生まれた、ちょっとわけありな感じの女の子。親の方針で学校にも通っていませんが、結構お利口そうな少女であります。
彼女の友達は、ガレージセ−ルで買ったという数体のバービー人形の首。彼女の妄想の中で、それぞれ役割分担されたバービーの首たちと会話し、子供の行動できる範囲の小さな世界の中で冒険を繰り広げます。
それこそ肉が腐ってゆく“腐敗臭”漂う作品なのですが、事故とも言えるある出来事があり、本来ならば成長して行かなくてはならない少女が、現実を受け入れることが出来ないまま、自らの妄想世界を深めて行く姿にそら恐ろしさを感じます。
カポーティが「不思議の国のアリス」を書いた、などと評されることもあり、もう少し幻想味ある作品かと思っていましたが、個人的にはもっと現実的な生臭さを感じました。もっとも「アリス」にしたって、超現実的な主人公アリスが、有象無象の不思議キャラたちと大人顔負けの論理でやりあう様は、単なるファンタシーには成り得ない、シニカルな印象を与えていましたが。
話を本書に戻して、主人公の女の子の妄想世界には、どことなく「青」と「黒」のイメージがあり、それは外界がかろうじてのぞける浅瀬の中で、這い上がろうにも水の中の心地よさから抜け出せないといったような、子宮内幻想を思わせます。
これが外側にいる我々大人から見ると、さあおいでと手招きしているのに、こちらを見つめたまま一向にその場から離れようとしない、そんな例えようのない不気味さに繋がるでしょうか。
お話自体は比較的さらっと読めて、それほどキワモノ的な部分は感じませんでしたが、「この子の行く末は?」なんて親心を発揮すると、思わず気分が暗くなってしまいます。その辺りがある意味“怖い”作品と言えるでしょうか。

@ちぇっそ@