ストーンな一日

今日は遂に来日を果たした、米国ストーナーシーンの正に生き字引とも言える、NEBULAのライヴを観に高円寺20000Vへとやって来ました。元FU MANCHU組が2人在籍、FU MANCHUを頂点としたファミリートゥリーを作成したら、その裾野の広がりは計り知れないというほどシーンへの影響力のあるバンドです。
今さらストーナーと言うのもアレですし、そもそも日本にストーナーが紹介され始めた時点で、欧米でのストーナー熱はその数年前に冷めてしまっていたわけですが、どこぞのQ.O.T.S.Eというバンドみたいに、安易なメジャーへの身売りをしてしまうことなく、いまだにアングラ臭を漂わせる現代ストーナーを代表するバンドですね。
こんなしがないライヴハウスへの出演で払えるほどのギャランティで、こうして日本へ呼べたことが何よりメジャーへ迎合しない彼らの姿勢の現れでしょうか。本日の出演は全4バンド。仕事帰りでしたが、最初のバンドからギリギリ間に合ったのでライヴレポートへとまいりましょう!
会場へ入ると最初のバンドは既に終盤に差し掛かっておりました、1番手はMACHINE ANIMAL!CHUCH OF MISERYに在籍していたことでも知られている、NEGISHI氏率いるオーガニックなヘヴィロックバンドです。演奏も華僑に入っており、NEGISHI氏はかなりのハイテンションで暴れまわっています。この日会場へ来た瞬間に気付いたのですが、もしやこれは「ほにゃらら」ではないか?もし今晩“手入れ”があった場合、店内にいる全ての未成年だろうが、既婚者だろうが、包茎手術者だろうが、整形美人だろうが、パイプカットだろうが、人工肛門装着者だろうが、容赦なく全員検挙!という事態になりかねない、それほどの“かぐわしい”香りが入り口付近に立ち込めていました。
正直ヤバイなとは思ったのですが、それよりも既に“キマっちゃって”そうなMACHINE ANIMALの演奏がヤバかったです。シングルギターにツインベースという編成。ギターソロならぬ、ハモリのツインベース・ソロが絶妙のアシッド感を醸し出していました。私も既にノリノリです!
続いて、デッドパンスピーカーズの登場です。ループするミニマルなギターリフでライヴがスタート。マニュエル・ゴッチングのようなスーペーシーな音色が響きます。反復されるパッセージが連なり、音の洪水に溢れる場内。どこからともなく「そんしーそんしー○○そんしー♪」と幻聴を伴う感覚。この“聴こえない音が聞こえ”てくる事こそがアシッド/サイケデリック・フューチャーの真髄であります。純粋に音だけで陶酔させる、その他の“人工生成物”などはその感動を増幅させる為だけの、単なる付加的要素でしかないのです。
軽快なビート、視神経を直接揺さぶるディレイの波。理性という名の枠組みが徐々に取り払われてゆく瞬間です。正にハンマービートと呼ぶにふさわしいドラムの鼓動、この日の彼らは素晴らしかった。企画の意図にもバッチリはまっており、会場全体がひとつのコミューンのような一体感に包まれました!
ちょうどトイレ待ちをしており、たまたま私の前に並んでいた、NEBULAファンの女性の方とお話をしている最中、なにやら後方から怨念めいた地響きが轟き始めました。
そうです。本日の3番手、名古屋が、いや日本が誇るドゥームロックの化身、エターナル・イリジウムがこの東京へと遷都したのです!一打入魂、ピッキングの一振り一振りが、巨木をなぎ倒しながら文明社会へと乗り込み、ウジ虫のような人間どもを殲滅させるがごとく立ち上がった大魔人の一挙一頭のような、激昂した荒々しさと重みを感じさせる。凄まじい!本物だけが持ち得る荘厳な調べ。この圧倒的な存在感の前に、我々凡人はただひれ伏すしかないのか!?
とにかくカッコ良かったです。女性外国人ベーシストを擁するトリオ・デ・ドゥーム!泣く子も黙らすその御名はよく存じておりましたが、念願かなってライヴ初体験。重厚なギターリフの心地よさもさることながら、ダイナマイトなベース女史の足元に陳列する、“直列3連結”のエフェクターが圧巻でした!これって、繋ぎ方、合ってますよね!?発する電流が既にマキシマムを超越しているのでしょう、直流電源でアンプを吹っ飛ばすくらいの凄まじい爆音です。またヴォーカルが素晴らしく、「朗々と歌い上げる」スタイルが“これぞ本物!”の怨念を綴っており、真性ドゥームの真髄を伝えていたことを、ここにご報告申し上げておきましょう!
さていよいよ、待ちに待った米国ストーナーの申し子、NEBULAのライヴ、始まりです!先ず1曲目はなんと、私の大好きRelapseからリリースされた1stアルバム収録の2曲目、「Down The Highway」からスタートしました!これは待ち焦がれた古株ファンへのサービスだったのでしょうか、これで盛り上がらないわけがありません、この私が!そりゃもう、はなからフィーバーさ!70sテイストを存分に感じさせる、ガッツィーなロックンロールリフ。耳馴染んだファズのノイズが、体内のアドレナリンを刺激します。
続いて演奏されたのは、知りません!知らない曲です。しかし基本的に、彼らの曲はどれを聞いても同じ。いわゆる「永遠のワンパターン」であり、何曲かを聞き込めば彼ら流の定番パターンが分かってきます。だから、ノレる!知ってる知らないの関係無しに、ひとたび聴取者のエンジンが掛かってしまえば後の祭り。いや、後はお祭り!カーニバル、アンド・フェスティバルであります!
いやしかし、それにしてもなんて“オーラ”のないバンドでしょうか!はっきり言って、20000Vと言うこの手狭な空間に全く違和感無く溶け込んでいます。だからこそ普通に楽しめるという部分もありますが、やはり結局は彼らも、本国でのアンダーグラウンド生活の長さが染み出た、根っからの地下生活者であると言えるのでしょうか。
新旧織り交ぜ、正に彼らのベスト選曲で行われたようなライヴでした(というか、私も途中までしか音源抑えてないので、“だったと思います”って感じです!)結局、ライヴが終了して私が知っていた曲は、MAN’S RUINからリリースされたEPの曲も含め、5曲ほどだったでしょうか。いやぁ、それでも、まさか来日はないだろうなんてタカを括っていましたから、あんな曲こんな曲を聴けた、しかもこのような小さなライヴハウスで!というわけで、個人的にはとても満足できました。
アンコールで演奏されたラスト2曲は、これまた1stのケツから2番目、「TITAN〜」と、SUB POPから出たアルバム、「・・・To The Center」から、タイトル曲でありオープニングナンバーの「To The Center」でした。
いやもう、最高に楽しいライヴでした。ビジネスライクな米国のバンドにはない、フレンドリーな雰囲気もありました。最初マイクの静電気にせいでナーヴァスになっていた、G,Voのエディー・グラスですが、会場のスタッフがなんとかかんとかリカバリーした後には、軽く「サンキュー」なんて声を掛けたり。終演後、ドラムのロマノに声を掛けると、その人懐っこい笑顔に癒される感じでした。
それにしても今晩はどの出演者も本当に素晴らしい演奏でした。企画の趣旨も終始一貫、ドゥームやらストーナーやらアシッドやら、どれも“スモーキー”といった感じでとても統一感があり、最後まで素敵な時間を過ごすことが出来ました。
できることなら翌日の下北沢シェルターにも行きたいのですが、こちらはどうやら売り切れの模様。まあ、あまり欲張っても良い事ありませんので、腹八分目でこの感動を噛みしめておこうと思います!

@ちぇっそ@