<詩篇>−ふにくりふにくら腐肉−

中途半端な時間に仕事が終わったため、乗り慣れない時間帯の電車で帰路につく。案の定、途中駅での接続が悪く、乗り継ぎの電車が来るまで20分ほど間が空いた。
仕事の最中、既に軽い夜食を食べていたので、外のコンビニで簡単な食料でも買うことにする。一旦、改札を出た。
パンを2つばかり、そしてビール。駅前の花壇に腰掛け、たった一人、深夜の晩餐である。
人通りは少なく、小腹を満たしていた15分の間、目の前を過ぎたのはたったの2人。私は、寒いねぇ、なんてひとり言いながら、小春のゆるやかな冷え込みの中、わざと手袋をつけずに、外気の冷たさを楽しんでいる。
遠くでは、国道を行き交う車の群れ。近くでは耳障りな騒音となれども、隔てた距離が見えない緩衝材となり、心地よい雑音へと落ち着かせる。時の流れが弛緩してゆき、ついには完全に止まってしまったような感覚。この世の全てから切り離された私。
宴の残骸はくずかごへとぶちゃってしまい、駅へと引き返す。振り向くと、夜空にはオレンジ色の三日月がのぞいていた。この次はおまえを肴に飲んでやりたい、と思う。
帰宅の人々でごった返す電車内、情け容赦なく現実に引き戻される感覚に、ふいの幻滅を覚える。
人肉詰めのソーセージと化した車内。せいろで蒸されるような熱気の中、出来上がった人間の燻製は、一体だれが食すことになるのだろうか。
カンニバル晩餐会。キリストの血のソースで召し上がれ。

@ちぇっそ@