DISWORLDUNDER the BLACKSUN Vol.1

さてさてライヴ直前、例によってGATE3近くの古本屋を物色していたワタクシ。前回来たときにお金が足りなくて断念していた、J・G・バラード太陽の帝国」を発見。まさかまだ残っているとは思わず。これはこの本が「アンタに買って欲しいんだ!」という私へのメッセージだと思い、迷わず購入。その他、国書刊行会出版のチェコ文学「そうは言っても飛ぶのはやさしい」や、現代ドイツのピカレスク書ホセ・ドソノ「夜のみだらな鳥」など、非常に食指の沸く本があったのですが、図鑑のような大部な書物なのでさすがに断念。まあ、こういった本は図書館へ行けば読むことができるので、焦って買う必要もないでしょう、と言いつつ、市営の図書館など利用したことのない私であります。
そして、お前は一体何しに大阪へ来たんだ!と言われようとも、やはり忘れてならない、私趣味のセレクトがされたピンク本コーナーへ向かいます。もちろん今回、私趣味のエロ本も購入したのですが、ふと目に止まった気になる1冊。それは1972年発行、「Pocket SM」と題されたSM小説雑誌でした。
それほど強くSMに興味を持ってるわけじゃないのですが、なかなかシュールでデカダンな表紙に食指を動かされ、手に取って眺め渡したワタクシはその裏表紙にびっくり仰天!なんとそこには、当時日本で上映されたロシア映画、グリゴーリー・コーヅィンツェフ監督作「リア王」の宣伝が入っていたのです!
正にリアルタイム!この、「SMとロシア映画」という組み合わせに条件反射を引き起こしたワタクシ。思わず買ってしまいそうになりましたが、当時500円そこそこで売られていた本に、なんと3000円の値がついているではありませんか!これはさすがに断念。みうらじゅんでもないのに、そんな微妙なシチュエーションだけの本に手を出すわけには行きません。確かに当時のエロ雑誌には文学性があり、希少価値を考慮すれば、なかなかに魅力的な1冊ではあります。しかしながらしがない貧乏人、狭いアパートの貴重な空きスペースを無闇に埋めるわけにはいかないという事情もあります。人生の全てを投げうつコレクターになんて、なりたくないんです!これでもほんの少しだけ、後先のことを考えて行動しているんです!
というわけで、そんなわけも分からない叫心のびは無視して、いよいよライヴ本番が訪れます。
時刻は7時過ぎ。さあ、まずは大阪が生んだ“巨漢ハードコア・グラインド”FORTITUDE、怒涛のブラスト祭からスタートです!のっけから吼えまくる、サイトゥーン氏のヴォーカルが今日も強烈であります!自分のコブシはもとより、ペットボトル、マイクを使ってガンガンと自分の顔面を殴っております。このGATE3という一種独特なライヴスペースにあって、FORTITUDEというバンドの殺人的な凄みというのが更に倍増します。まるでスラムの裏通りで行われるストリートライヴのよう、コワイ、コワ過ぎる!そういえば、ウクライナの大統領に就任したユシチェンコ氏にどことなく似ている(失礼!)ギター氏も、今日はまた凄い迫力。「顔で弾く!」そのような形容が相応しい激しいピッキング。フロアまで降りてきて、観客をなぎ倒かのようにギターのネックを振り回します。そしてグラインド界の禅僧、H野氏の怒涛のブラストビートが炸裂!今日はまたいつになく速いです。そんなに飛ばしたらマッポに捕まっちまいますよ、「やらいでか!」ブラストスピード違反です。
FORTITUDEという重鎮バンドの登場で、初っ端からエンジ全開でスタートした本公演。本日のトリは、我らMORQUIDO。果して、お客さんみんな最後まで体力残っているかどうか、思わずそんな心配をしてしまう私でありました。
続いて、今回の主催であるLIZAED’S GORGE。先週の小岩で初めて見て、その真性ドゥームっぷりに一部のマニヤ連から密かに評価の声が上がっていた彼ら。何を隠そう私も少し“もってかれた”クチで、2度目となる今日、かなり期待してその演奏を楽しみにしていたのです。グルーヴィというでも、執拗なるリフの反復とも違う、どんよりどよどよとした、まるでコールタールの波間でたゆたうかの陶酔感。ひとつところに留まるのではなく、確かにどこかへ向かって流れている。しかしその流れは母なるナイルの奔流の如く、ゆっくりとではあるが、漫然とした抱擁感に満ちている。直接的な暴虐性こそないが、見る者を幻惑の悪夢世界へと誘う。こんないかにもモノマニアックな音楽にこそより愛着を感じてしまうのは、もはや自分自身の精神崩壊が起因していると思われますが、一般世間に帰属しない、なんとも異様な彼らの演奏に、またしても感銘を受けてしまった次第であります。
そして3番手は、WOUND!えー実は、この時同じく先ほどの演奏にいたく感動した松山のスーパースター。。。いや、もとい。スペースグラインダー氏とLIZAED’S GORGEの凄さについて語っておりまして、WOUNDが始まったのも気付かず、慌てて中へ飛び込んでみたら5分くらいで終わってしまい、あまりちゃんと見てなかったのですが、今日はなんだか(ちゃんと)見た人に、「上手かったよ!」と言われたそうです(?ちがったかな)珍しいこともあるもんですね(爆!)しかしですね、私とスペースグラインダー氏が話しでたのだって、そんな5,6分なもんですよ(すいませんちょっと酔ってましてあやふや)。久々にショートカットなライヴだったわけですね。知らぬ間にみんな汗だくになってるのが怖かった。
さあ、そしてトリ前、最凶ブラックメタルバンド、DEATHCHURCHの登場です!以前GATE3に来た時に思ったのですが、こちらのステージ後方に設置されたバックのアートワーク。これが実に邪悪で、前回来たとき、「ここでDEATHCHURCHが演っているのを見てみたい!」とメンバー共々申しておりましたが、なんと今回、その願望の実現がかないました!こんなチャンスは滅多に無い、午前中スパ温泉で休養をとった我々「M」と違い、あまり寝てなさそうな彼らに少し心配を寄せますが、とにかく楽しまなければ損とばかり、私はここで芋焼酎を一口含んでおきました。そして本番スタート!私の目論見通り、GATE3でのDEATHCHURCHは正にハマリでした!ドラムF島氏の浪人のように結んだ後ろ髪、そしてその後方にある、紅蓮と黒褐色のみで描かれたアートワークが絡み合い、さながら戦国合戦絵巻を見るかのよう。エンドレス・ブラストの槍が降れば、「呪い」という名の妖刀を振り回すのはギター、DUST氏。ざんばら髪すら剃り落とされた落ち武者が、怨恨の恨み節を唱えるが如く、邪悪な呪詛を吐き散らす。その隣りでは西洋の魔物か、大鎌を振りかざす黒塗りのベース氏が、まるで死神の容貌をたたえ、地獄の胃袋から断末魔の雄たけびをあげるのです!
予想的中。この場所でDEATHCHURCHを見れてホントに良かったです。出番が次なのにも関わらずワタクシ、大暴れしてしまいました。しかしまあ、楽しむ為に大阪まで来ているんですから、それも有りですよねぇ。とっても楽しかったです!
そして本日ラスト、我々MORQUIDOの順番が回ってまいりました!先週の小岩とはまたセットリストを変え、前回やらなかった曲も交え全8曲、なんと2回のアンコールに応える大盛況振りで無事本公演を終えました!まあ、いつもの「ペインキラー」なイントロからスタートしたわけですが、前回の小岩も完璧なモニターのお陰で良い気分で叩けましたが、今回はまた使い慣らされたドラムセットが身体に馴染み、実にフレキシブルな感じで演奏そのものを楽しむことができました。私らが大阪で演るときはいつもそうなんですが、お客さんが独特のノリで、モッシュというよりなんと言いますか、さながら「デスコ」のようなノリで、大いに楽しんでくれている姿がドラムの後ろからでも確認できました。それにしても、アンコール2曲ってのも初めてでしたね。一応、念のため、1回分のアンコール曲は用意してたのですが(笑)、まさか2回目が来るとは思わず、ラス曲のカヴァーと合わせて、なんとカヴァー2連チャンで締めくくることになってしまいました!いやもちろん、両方とも“あのバンド”の曲ですよ(知ってる人だけ想像してください!)
というわけで、ノリノリでライブ終了。更にステージを降りた後もある方から、「もう1曲聴きたかった!」などと言って頂きまして、普通なら恐縮してしまうところですが、これは今回ホントに嬉しい一言でありました。長年バンドやってますが、こんな素直に喜べたのは始めてかも知れない!
そして終演後、今度は飲み屋へと会場を移しまして、アルコホールという名の楽器が奏でる、最後の宴へと突入するわけです!
なんともはや、デッド・オア・アライヴと申しましょうか、そりゃもう大変でした!スペースグラインダー氏のハードコア生本番体験の貴重な話を聞けたり、センスの良いドラムを聞かすLIZAED’S GORGEのドラマー女史の意外なルーツが判明したりと、とても楽しい時間を過ごしたのですが、ダンナ、最後がイケナかった!
本人の名誉のため名は伏せますが(笑)、もうお開きというその段になって“あの人”が完全に酔いつぶれてしまい、道端に寝転んだまま動きません。そこでFORTITUDEの方が自宅へ連れ帰ることになり、ギター氏が運転してきた“スーパーカー!(軽トラとも言う)”の荷台に彼の身体を乗っけます。「ドナドナド〜ナ〜ド〜ナ〜♪○○乗〜せ〜てぇ〜♪」と、みんなで歌いながら(ホントです)、冷たくなった(なってません)彼を荷台へ転がし、“スーパーカー”はまだほの暗い難波の街へと消えて行ったのでした。
あの人の面倒を見て下さった、FORTITUDE及び大阪の関係者の方々には絶大なる感謝を表します!その後の話はコワイので聞きませんが(笑)、果して大丈夫だったのでしょうか、あの人は。
まあ、そんな伝説も誕生したりと、MORQUIDO4回目となる大阪の夜でありました!
颯爽と“スーパーカー”で登場した、FORTITUDE氏の姿が忘れられない。

@ちぇっそ@