ドストィェーフスキー祭2005

そう言えば先日、今週始めくらいになりますか、私の機材用バッグのポケットから1枚のCDが出てきました。えー、ZOMBIE RITUALの1stフルアルバム。年末の小岩デスフェストにて購入、とりあえずケースが割れたりしないよう、一番安全な機材バッグにしまいこんだまま忘れていたわけです。
いやぁ、申し訳ない!それが今ごろ発見され、年明け2週間以上経ってからやっと聴きました。ホントにね、素晴らしい内容ですよ。スラッシーな疾走感、多彩なリフ展開の妙、正に泥酔しているかのようなゲボゲボのヴォーカルラインはデモの時より数段パワーアップしており、名立たる有名バンドの作品と比べてもなんら遜色ない出来栄えであります。
おバカ度満点のジャケも丁寧に製作されており、裏ジャケにはバーコードまで印刷されててビックリ!やるな、RAZORBACK RECORDS!これで世界流通にも応えられます。BURRN!的に評すなら正に「捨て曲」無し!全曲それぞれが明確な特徴を持ち、しかもその全てに「ZOMBIE」というキーワードを織り込んでいるという。ゾンビ祭たけなわ、老いも若きもゾンビファイヤー!ホラーパンクならぬ、ゾンビメタルが堪能できます。いやぁ、マジでカッコいいです!
というわけで、こっちがゾンビ祭なら私は現在ドストィェーフスキー祭開催中!というわけで今回、ドスト氏の処女長編に当る「死の家の記録」を読了致しました。もはや研究され尽くされているところではあるので、ここはひとつ、単に私の下衆な感想などを書いてみようと思います。
「作家の本質は処女作に宿る」の格言通り、例に漏れずこの作品には、その後のドスト氏の作風を決定付けるキーワードやモチーフがふんだんに溢れています。実際の事件として、ドスト氏は革命派の会合に参加していたとして、警察当局により逮捕、シベリア抑留を余儀なくされました。そして当時の監獄内の様子などを、「ある人物の手記」という形を持って記したのでした。それがこの作品であり、文豪ドストィェーフスキーの誕生に関与した出来事であったのです。
実に生き生きと描かれるのは、その類稀なる人間観察力によるもの。宗教的示唆の表れは、聖書だけが獄内に持ち込めた唯一の本であり、また絶望の中で神に祈りを捧げる囚人の姿から感銘を受けたものだからです。お役所的でありながら情緒不安定で気まぐれな看守、苦しいながらしたたかに生きる囚人達など、当時ロシアの縮図とも言える様子が、監獄内で展開されています。
監獄内小説といえば同じくロシアの作家、ソルジェニーツィン作「イワンデニーヴィチの一日」などがあります。こんなことは言うもんじゃありませんが、このロシア作家達の作品を読むと、かくも監獄ってところは素敵なものなのか!と錯覚してしまいます。作品自体がとにかくおもしろいというのがありますが、魅力的な囚人達が巻き起こす、個性豊かなエピソードの数々がとても楽しいわけです。
ストーリーが最初から最後まで一貫しているというよりは、1日1日の出来事が連なる形で、むしろ連作短編集のような趣さえします。ちょこちょこ読んで行けるので、非常に読みやすい。更に付け加えるなら、ドスト氏は関係のある人物が再度登場する度、「Mとは、〜の時の囚人である」などと、いちいちエクスキューズを付けてくれます。ですので、数多い登場人物を前にしても、それほど混乱することはありません。
かれこれ、私が読んだ氏の作品は4作目を数えましたが、どれもがめちゃくちゃおもしろいとはどういうことでしょう!はっきり言って、こんなことを言ってはおこがましいにも程がありますが、氏の作品がこんなにも私にフィットするのは、何かこう、文章の表現の仕方だとか、ものを観察する時の視点なんかかが近いからなのではないかと思えてきます。いえ、もちろんロシア語を解さないので翻訳しか読んだことはなく、原文の雰囲気などはかり知ることはできませんが、スポンジに水が染みるように言葉が入ってくる。
言葉の大洪水とも言える大長編を多くものしているドスト氏ですが、最後の一行まで飽きることなく読みとおせるというのは、ドスト氏の作品を読むときにしか味わえない、一種独特な感覚があります。私にとって、ドンピシャな作家なのでしょうね!
あ、最後に、物語のラストがどうなるか、この作品に関しては言っていいですよね?嫌な人はここで止めてください(笑)
最後にはもちろん、出所します(笑:でなきゃ話が終わらないって)。やはりですね、泣けますねぇ。とっても分かりやすいラストでありますし、語られる一言一言が思慮深く、とても美しい情景であります。希望と分かれが同居する、なんとも言い難いあの感動があります。それって泣けるでしょ、やっぱ。
でも、最後まで結局おもしろさの分からなかった人にとっては、「ああ、やっと終わった!」という開放感で涙を流すかも知れませんが!

@ちぇっそ@