イヴの夜に、熱き紅蓮の雪が降る

皆さん、イヴの夜はいかがお過ごしになられたでしょうか。まあ、いきなり過去形になってる時点で、単にまとめ書きしている月曜日の朝なんですけどね。
私ですか?いやぁ、そんな色気づいた話もありませんよ。仕事帰りの電車では、こうドレスアップしたお姫様がいっぱい。カップルも多かったでしょうかね、若者たちはラヴラヴモード全開って感じでした。いや、いいじゃないですか。青春ですね。こういった季節ごとのイベントが、愛の炎を燃え上がらし、超大国より受け継いだ資本主義経済を潤すわけです。ま、私にゃ関係のないことですがね。
そんな私は自宅でおごそかに映画でも見て過ごそうかと、借りてきたDVDでも見ることにしました。しかしですね、こんな聖なる夜に普段見るような残虐でグロテスクな作品は似合わない。こんな自分でも、ロマンチックな一夜をひとしきり演出してみるのもいいじゃないか。
そこで手元にある4本のレンタルDVDを物色。ありました、ありました。たまにはディズニーのアニメでも見て、美しい夢とファンタジーの世界に身を委ねてみよう。味気のない現代生活の中で、荒みきった心を清らかにしてくれるような、そんな幻想的な光の中へと舞い込んでみたい!
というわけで選び出したDVD作品。本日の映画レヴューはウォルトディズニーの古典的名作、「白雪姫」です!。。ん?,,,白雪。。しら。。
すいません、間違えました。私にそんな爽やかな少年の心は残っていませんでした。改めましてご紹介致します。本日の作品は「修羅雪姫」!梶芽衣子主演、東京映画作品です!
まあこちらが例によって「キルビル」の元ネタとなった映画であることはいうに及ばずですが、率直に申し上げて、やはりオリジナルは素晴らしかったと。初期の梶芽衣子主演の作品はどれもそうなのですが、積年の恨みつらみを背負い、自分の青春を捨て、憎き仇敵を妥当するまでその復讐の炎を燃やし続ける。そんな因果な役所が多いわけです。
作品の内容については、いかにも時代劇的な復讐劇に終始しております。夫を殺された女が監獄の中で一人娘を出産する。しかし力尽きた女は間もなく息絶えてしまう。夫の敵を、無念の内に消滅する私の敵をとってくれ、と。逆子で生まれ、修羅の運命を背負った我が子に、その執念の祈りを託して。
とまあ、そんな感じで、復讐の鬼と化した梶芽衣子が、ちりぢりになっていた宿敵を探し出し、情け容赦なくその一人一人をぶった切って行くわけです。
これがかっこいいんですね。切り落とされた腕や胴体がはじけ飛び、ざっくり切開された傷口からは真っ赤な鮮血がほとばしります。過去の回想としてのモンタージュが挿入され、それが時には実写、時にはコンテとなる作画であり、この辺りが全てキルビルでも踏襲されている「画期的」な演出となっていたわけですね。ある意味漫画チックであり(元々原作が漫画ですから)、劇画的クドさを持って見る者を圧倒します。
いやしかし、今回これを見て思ったのは、やはり日本芸術の伝統として、「恨み」という要素が非常に重要なのではないということです。もちろん海外にもそういったものはあります、西部劇なんてもの復讐劇がほとんどです。しかしもともとあちらには「決闘」といったものがありますので、見つけた敵に勝負を挑んでピストルで「バン!」のように、後腐れのない印象を受けます。
しかし日本では、殺した方も殺された方もどちらもその因縁からは開放されることはないのです。恨みが恨みを呼び、憎悪の塊となって末代まで呪いつくす。そんな切羽詰った息苦しさがあるわけです。
そんなわけでドライに成り過ぎた現代日本の惨状を憂いつつ、こんなところでそろそろ筆を置くことにしましょうか。
いやあ、それにしても、梶芽衣子の「眼力」は凄いですね。ある素早いカット割りの場面で思わずのけぞっちゃいました。「カッコいい!」って。若き日の黒沢年男も、なんかイナセな伊達男ですね。もりゃモテるだろって。

@ちぇっそ@