食あたりならぬ

ノイズ当りになってしまいました、南青山というスかした街で!
そもそもこの日本にセレブなんてものが存在するのか!なんて毒のひとつも吐きたくなってしまう今日この頃。季節はクリスマスモード真っ只中、開演時関より幾分早く到着した私は、数々の電飾にデコレートされた街並の中を彷徨う。路地裏の、センスよくまとめたれた小さな店舗も、「私はここにいますよ」なんて、行き交う人に控えめな主張を訴えている。
「この周辺の道路での嘔吐や排便を禁ず」ハイソな街の景観を損ねるような行為に対する戒めの看板が立てかけられている。しかしそんな人種差別的たしなみなど、こちらの方から願い下げ。それこそ、「クソ喰らえ!」である。こちとら最下層の人種。糞便入り乱れてこそ人生の何某というものだ。
すいません。何か妙に毒づいてしまいましたが、単に今はそんな気分なだけです。別に南青山が悪いんじゃありません。多分私が全ての元凶なのでしょう。
こんなイヤミったらしいお洒落な街ですが、結構楽しませてもらいました。意外と大好きなんです、こういう”夢を見させて(頭をバカにさせてくれる場所)”が!まるでロシアの教会のような見事な高級レストランなんて凄かったです。プチディズニーの様相です。もし私がデートとかしたら絶対こんなところに連れて来たいなあ、なんて思ったり。いやぁ、それくらい、いざって時は奮発しますよ!(ホントかね)
南青山SPIRALでライヴでした。
今晩は、凶音こと黄泉槌が出演するとのこと。こう言っていいのか分かりませんが実質、凶音の復活ライヴとも言えるので、正にこの1日早いクリスマスプレゼントとも言える記念すべき瞬間に立ち会いたかったわけです。
他の出演者も錚々たる面々で、凶音のみならず、今日のこのイベントを非常に楽しみにしておりました。リポートについては、追々ご紹介して行くとして、先ずはライヴ前のプチイベントについて。
先に述べましたように、少し早く着いた私は青山の街をぐるっと徘徊してきたのですが、それも実はこの後に控えるイベントの前振りに過ぎませんでした。普段訪れない街を観光気分で見て回り、”その時間”に合わせて、再びSPIRALに戻りました。”その時間”とは。早めに来てSPIRAL内を見学していた私は、見つけていたんですよ、こんな告知を!
「18:00より、3Fホールにて”ゴン太くん”再び登場!」
見に行かないわけがないじゃないですか!本日はSPIRAL内でキャラクター展もやっていたんですね。ライヴも18時スタートだったのですが、ノイズのイベントだし、そんなすぐには始まらないだろうと思ったので、時間通りにイベントホールへ向かいました。
するとやはり、ゴン太くんを待ちわびる他のお客さんもおり、「あれ?ゴン太くんどこいるのかしら?」なんて囁き合っています。会場へ目を凝らすも姿見えず。まだ出て来てないのかな、なんて思っていた次の瞬間!出てきました。本物のゴン太くんです!
通路を塞ぐかのようにヒョコヒョコ(首が)グラグラと歩いてきます。モンドです、正にモンドな瞬間です!しかしさすがにデカイです!何かこう非常に落ち着きのない感じ、3歳児くらいの思考能力しかないような、そんな不気味さがあります。
といったところで、ひとしきりゴン太くんを眺め納得した私は、とくに記念写真なども撮らず、というかこんなムサ男がこんな萌えキャラと一緒に写真に収まっている姿などバレた日には、末代まで恥じをさらすことになるでしょう。(そんなことはない)
というわけで、ライヴです。今日はゴン太がメインじゃありません。ライヴを見に来たのです。
本日は、「和とノイズの饗宴」とでも言った趣で、会場となったSPIRAL内レストランCAYでは、古式ゆかしい邦楽の調べが響いております。中央のブースで皿を回すのは、モンドオタク、音楽全般のコレクターである、Los Apson?のヤマベケイジ氏であります。予断ですがその昔、故店長がいらした時にLos Apson?で1泊したことがあります。
1時間も過ぎた頃でしょうか、先ず最初に登場したのは、(多分アメリカから)来日を果たしたBastard Noiseです。男性2人からなるユニットに見えますが、本当はもう1人いる?ということでしょうか。ある筋から、一人は先に帰国したという情報を得ています。
メンバーの一人はAxCxのTシャツを身に着けています。彼は先ほどから場内を練り歩いておりました。そのいかつそうなセンスからは想像できない、メロディアスなニューエイジ系の音響を操作しています。気持ち良いです。個人的には、タンジェリンドリームのような分かりやすさを持ったユニットだと思いました。
しかし今回はこれだけで終わりません。なんと途中から日本の伝説的人物達とのセッションが始まったのです!
向かって左側でマックのモニターから返す光が、日本ノイズ界の帝王、秋田昌美提督を照らします。そして、中央のドラムセットに陣取るのはなんと、世界のアヴァン王たる、灰野敬二尊師ではありせんか!これはもはやクリスマスの夜に起こったノイズ界の奇跡と呼べるでしょう!
テクノロジーを駆使し、洗練されたスタイリッシュな道具立てで、クールな表情を見せる秋田提督と、アナログチックなエフェクター類に半ば埋もれるようにつまみをいじる、Bastard Noiseとの対比が非常に印象的。
とここで灰野尊師がおもむろにマイクへ向かう。エフェクトの掛かったソプラノヴォイスで、Bastard Noiseのアーシーなノイズに呼応する。徐々に、ゆっくりとそのしじまを破る形で、小波ほどであった海原が、大波押し寄せる嵐へと変調する。
尊師がスティックを手にする。もはや「叩く」というより、蹂躙するかの型破りなスッティクワーク。単にリズムを提供するなどと言った生易しいものではなく、これがリズムの慣れの果て。ジャズですらなく、トライバルというのでもない。形容することも不可能な、人知不覚の舞でありました。
ヤマベ氏による転換のSEに導かれ、続いて登場したのは我らが、凶音(もうこう言ってしまおう!)久々のライヴとあって、一体どんなステージを見せてくれるのか楽しみである。
やはりヴォーカル氏は今日も「百眼」である!両手に巻かれた鋲付きリストバンドが如何にも痛々しい!日本刀を持ち出し暴れる様子は、やはり黄泉の国よりの死者の如く、盲信の残虐性を持って我々に迫る。
普段こういったバンドが行うようなライヴハウスでない為、足元には小さなモニターしか置かれていない。しかし「百眼」はところ構わず荒れ狂い、眼下の小さな障害物などものともせずに蹴りまくる。
「そんなアンプなど小石のようだ!」と言わんばかり。ステージからアンプの雨アラレが降り注ぐ。危ない!誰か止めてくれ!
久しぶりとあってか、さすがにステージ運びのテンポなどで手間取った感も無きにしもだが、一時的にではあるがこうして凶音のライヴを見れて嬉しかった。特にあのドラマーの独特のフォームが、個人的にもの凄くハマリなので、また是非ともできる事なら、同じメンバーでの復活を切に望む次第である。
そして本日のラスト。驚愕のノイズ最強コンビ、灰野敬二尊師と秋田昌美提督によるkikuriの登場である!
まあ、このお二方に至っては私如きが何をか言わんやであるが、今回特に印象的だったのが、灰野尊師に対する秋田提督のコンタクトの機敏さである。正に本能の赴くままにギターを掻き毟り、感情の爆発を抑えることを知らぬ、慟哭の絶叫を繰り広げる尊師とは対照的に、鉄面皮の如く表情を変えず。常に冷静沈着に音楽の行く末をコントロールして行く秋田提督。
これはもはや上等のジャズである!目の前で繰り広げられるのは、マイルスのコンボであろうか!アーバンな大人の音楽に身を委ねるだけである。完全無比なコール&レスポンスの調べが、演奏に緊張感を与える。
素晴らしいノイズ。素晴らしいコンテポラリーの夕べでありました。
そのお蔭か終演後、私はもうグッタリ。異常に披露困憊した私は、青山に来たついでだとばかり、近くのカレー屋で「かきフライカレー」を食べて帰りましたとさ。(なんかフツーですな)

@ちぇっそ@