チェチェン・ウォー

さて、ビデオを見ました。
「フリークスも人間も」「ロシアン・ブラザー」他、現代ロシア映画を代表する若手監督、アレクセイ・バラバーノフの作品です。内容はタイトルをご覧の通り、フィクションとしてあるエピソードを挿入し、チェチェン紛争の実情をとらえたリアルな戦争映画です。
イギリスの舞台俳優と女優が、グルジア公演中チェチェン軍に捕えられる。その拘留先の基地の中で、同じく捕えられたロシア軍兵士と出会う。監禁されている主人公イワンと、イギリス人ジョンの2人だけが突如開放される。チェチェンのボスが言うには「残された女優を開放したかったら、200万ポンド持って来い!」と。
故国へ帰還したジョンはなんとかその大金を工面しようとするが、その半分もない45万ポンドしか用意できなかった。そこで単身ロシアへ乗り込み、盟友イワンを連れ出し、再び紛争真っ只中の国境付近へと乗り込んで行く。
例のイラクの映像ではないですが、のっけから首切り。みせしめの為の指詰め。長い歴史の中で、スラブ民族の根底に鬱積した怨恨をぶちまけるかの衝撃的な場面からスタートします。
2001年の作品。確かにあのイラクの事件にも驚かされましたが、そんなことは以前から当然の如くあったのだと言わんばかりに、日常の風景として虐殺が繰り広げられるわけです。元兵士のイワンと、銃も撃ったことがない英国人ジョンが、激戦の最前線で繰り広げるドタバタというコミカルな一面もありますが、必要に迫られ、自分の身を守る為とは言え、平然と人殺しを行うイワンの姿には、かくも戦争と言うものが人の精神を異常な状態へと変貌させるのだと、見ていて恐ろしくなる思いです。
ロシア映画のリアリズムというのは古くより定評があり、銃撃され、血まみれの死体が転がる様など、本当にグロテスクなものがあります。フィルムがまた凄くクリアなものを使用しているらしく、真っ赤な鮮血が鮮やかに捉えられているところが、更なるリアルさを醸し出しています。
新世代のロシア監督らしく、作品はテンポ良く進んで行きますので、ロシア映画初心者にもお勧めできる作品ではないでしょうか。但し、「ロシアン・ブラザー」でもそうなのですが、この監督は残虐なバイオレント・シーンに定評がありますので、心臓の弱い方は鑑賞を控えた方が良いでしょう。しかしその非道なシーンも、何事もなかったかのように演出するので、ボケっと見ている分にはそれと気付かずにやり過ごせるでしょう。ってそんなことはありません、ちょっと過ぎた後で気付きます。吐きそうになります。
私がこの映画を見たのは、もちろんロシア映画だということもありますが、なんといっても個人的に一番敬愛する俳優「ロシアのブラピ」と異名をとる、故セルゲイ・ボドロフJrが出演していたからでもあります。
主演ではないのですが、さすがにこのロシアの人気俳優がチョイ役でもないだろう。なんて観始めたのですが、一体最後までどこに出ていたのか分からなかった私は、ファン失格なのでしょうか?
ちなみにボドロフJrは、自作の撮影中に氷河崩落に遭って亡くなっております。

@ちぇっそ@