それじゃあ、今度は今日読み終わったヤツだ!

ここのところ仕事が忙しくてなかなか読み進められなかった、岩波文庫出版「ソーニャ・コヴァレフスカヤ」を出勤の電車でやっと読み終わりました。
このソーニャ女史は一体どういう方かといいますと、ロシア発の女性数学者にして兼業作家という、まるでキュリー夫人のような人なのです。しかしこちらは19世紀も後半の人物ですので、キュリー夫人よりも一足早く、ロシア人でありながら女性数学者として世界に第一歩を印し、この世にフェミニズムの芽生えをほのめかした初期の人物でもあるのです。
この書物には、彼女自身がが執筆した随想と、彼女の死後、その友人であるスウェーデンの女流詩人による伝記の2編が収められています。
随想は、彼女の少女時代。父性社会ロシアにおいて、進歩的な思想を抱いていた彼女とその姉。2人が感じた家族からの疎外感が描き出されています。いかにもロシアの片田舎で巻き起こるメロドラマ的な風情を醸しますが、そんな中で、彼女が数学に興味を持つきっかけけとなる出来事や、ひょうんなことから沸いて出た、文豪ドストイェーフスキーとの出会いなどが書かれています。素朴な味わいのある文章ですが、登場人物の心理描写に長けており、白ロシア人の堅実な生活の様子が伝わってきます。
こういった味わいもさることながら、出会ったばかりのドスト氏に恋をし、しかしドスト氏が愛したのは、実は姉のほうだった!なんていう、ドラマチックな一幕も挿入され、中篇ながら実に読み応えのある随筆となっているのでした。
伝記の方はソーニャがロシアを飛び出し、ドイツの教授に師事。その後、彼女の研究が認められ数々の賞を受賞。スウェーデンの名門校の教授に抜擢されるなど、正にキャリアウーマンとしての華々しい活躍が語られます。しかしその実生活では夫との不和が生じたり、更に姉の病気などと重なり、彼女の描く理想とはかけ離れたものになって行きます。
時代はまだまだ男性主体の世の中。彼女の社会進出を快く思わない人もいます。しかしそんな中でも気丈に振舞う彼女ですが、仕事か家庭かそんなジレンマに陥いり精神的に衰弱して行きます。
30代半ばと、若くして亡くなった彼女ですが、その最期はとても寂しいものでした。もし自分がこんな状態で死んだならと考えると、そら寒い気持ちを禁じ得ません。壮絶な最期を迎えた彼女の真実の姿とは、寂しがりやで、誰よりも愛に飢えていたものだったわけです。
仕事に生き、一方では絶えず愛を求める。人生を全力で駆け抜けたソーニャの生涯に、悲しき生き様を覚えながら巻を閉じた、この冬の出勤前の私でした。
なんか最近、こんな風に本の紹介ばっかりですね。そりゃそうですよ、昨日も終電まで残業してましたから、仕事のこと以外書くことなんてありゃしませんって!でもまたグチが始まると長いしね。いや、あったんですけど〜

@ちぇっそ@