キャナリー・ロウ
- 作者: ジョン・スタインベック,井上謙治
- 出版社/メーカー: 福武書店
- 発売日: 1989/05
- メディア: 文庫
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アメリカ文学の大御所、ジョン・スタインベックによる長編。
恐らく本作の主人公であろう、ろくでなしのマックは、町に住む生物学者の先生のためにパーティを開こうとします。ところが第一回目の試みは大失敗!汚名挽回となる第二回目の作戦を決行するのですが、どうしても前回失敗が頭をよぎるのでした。
この基本ストーリーの中に、時として全く脈絡なく幻想的ともとれるエピソードが挟まって、キャナリー・ロウが生み出す独特のノスタルジーを演出しています。
文庫で250ページ足らずにも関わらず、全32章の小編で構成された本作。愛すべき人間ドラマがここにはあり、登場するキャラクターの全てが限りなく愛おしい存在に思えてきます。
「恐らく主人公はマックである」と書きましたが、もっと大きく視野を広げるなら、この缶詰横町そのものが主人公であると言えるでしょう。
終盤、サンスクリット詩の引用があり、またその後に、名も知らぬ本の一節が読まれます。散文的な本文と(そうであっても文章の響きとリズムが素晴らしいが!)、緻密に構成されたこれらの文章の対比があって、物語の余韻を更に引き立たせる効果をもたらすのです。
人生、厳しさを経験してこそ美しくなれる!心が荒んだときに読みたくなるような、大いなる癒しを覚える傑作でした。
@ちぇっそ@