スリープウォーカーズ

人目を忍んで生きる一族がいた。彼らは「スリープウォーカー」と呼ばれ、人の精気を吸って生きながらえてきた。彼らの敵は唯一、「猫」である。今日もまた一人の娘が狙われる。戦慄に覆われた町は大騒動。阿鼻叫喚のクライマックスを迎える大型官能ホラー!
と言った感じが、怖くないB級ホラーの宣伝文句に相応しいでしょうか。どうです、みなさん。これを読んで作品を見たくなりましたか?
モダンホラー界の重鎮、スティーヴン・キング脚本・出演(!)による恐怖長編です。あらすじを簡潔に記せば、ある日やってきた転校生が実は「スリープウォーカー」で、彼はクラスの女の子をデートに誘うのですが、なんとそれは彼の母親のための「エサ」探しだった!と言うお話なのです。
決して低予算ではないだろうし、(だって「SAW」の第一作と比較して、それより金かかってそうだし、そもそも「着ぐるみ」一体作るのだって相当費用が要りますよね?)、天下のキングをして、何故ここまで「怖くない」のか。
鑑賞中、思わず口にした「これはヒドイ!(決してスプラッター描写が怖かったとかではない)」という言葉、果たして何度連発したか知れません。
スリープウォーカーの青年は、まんまと女の子を墓地へと誘い出すのですが、本当にその娘のことが好きになりかけており、一時は彼女を母親へ「献上」するのをためらうまでになりました。
すると墓地でデートする2人は、「あ!」と足を滑らせ、抱き合ったまま坂の下へ「ゴロゴロ〜!」と転がってゆくじゃありませんか!「ゴメン」と謝って立ち上がりかける彼。それを彼女が引きとめてひとこと、「何故離れるの?(好き同士なんだからそんなの必要ないじゃない、の意を含む)」
見ている私は思わず、「これはヒドイ!(見てられん、の意を含む)」アンタねぇ、今時どこぞの青春映画でもそんな演出なかろうに・・・。
しかし急に本性を表した彼は、さっきまでのラヴラヴ気分などどこ吹く風。あっと言う間に「母の手先」へと豹変し、彼女に襲い掛かってゆく始末。そこら辺の心の葛藤とかないもんですかねぇ。まったく身もフタもない。
そんな化けの皮を剥いだ怪物に、「ライバル」である「猫たち」が大挙して襲い掛かるのですが、そこは動物愛護にうるさい資本主義大国、怪物に飛び掛った瞬間、「猫たち」は「ぬいぐるみ」へと変化しているわけです。
“ガチンコ”と言う意味では評価できるかも知れませんが、このご時勢、お金を掛けるなら「CG」に方に投資した方が良かったのではないかと思うのです。あまりにチープな演出に、恐怖半減と言うより笑っちゃいます(笑)
この「ぬいぐるみ」オチ、警察官が串刺しにされる場面でも見かけたなぁ(笑)
かようにして、良いところ全く無し!の困ったチャンな作品ではありますが、スティーヴン・キング・マニアなら外すことの出来ない一作。何せ、キング御大が墓地の管理人役で出演しているのですから。
他には、英国きっての血みどろホラー作家クライヴ・バーカーも、科学捜査官役で出演しています。
キングだけに、脚本は相当おもしろかったのかも知れませんが、映像はもう少しなんとかならなかったものか。ホラーって言うより、全編かなり笑えるんですけど(笑)
映画の出来は、奥さんのタビサ・キング並みにしかならないのかね(タビサ・キング著「スモールワールド」はカルトなダメホラーとして知られている)

@ちぇっそ@