怪僧ラスプーチン

怪僧ラスプーチン

怪僧ラスプーチン

マッシモ・グリッランディ著の「怪僧ラスプーチン」を読みました。
ラスプーチンが先か、支配階級の腐敗が先か!?」と言われるほど(言ったのは私だが)、混乱期の国内にあって、正に帝政支配による専制政治崩壊のきっかけの一端となった、「ロシア一のお騒がせ男」グリゴーリィ・エフィーモヴィチ・ラスプーチンの生涯を綴った史実であります。
しかしとても時代がまともではなかった時期であり、それら語られる歴史が誠か嘘かは、実のところ判然としないもの。ロシア混乱期における“怪僧”の遍歴は、巷に広がるありとあらゆる噂や憶測を盛り込み、虚実ない交ぜとなった伝説が、ある種「神話的」な様相によって彩られております。
話に尾ひれが付くのは世の常ですが、ここには「ラスプーチンかくあるべし!」と信じたロシア国民、ひいては歴史家?野次馬?全てひっくるめて、カリスマとして相応しいドラマであって欲しいと願う、全人類の想いすら込められているでしょうか。
シベリヤ出身で百姓出のラスプーチンは、元来心優しい平和主義者であり、近代化を推し進める情勢の中にあって、古き良きロシアの魂を説く求道者でもあったそう。
幼少期に教育を受けた「鞭身派(フルイスティ)」の教えが、ラスプーチンの思想の根底を形成しています。欲望と言うものに対して敏感であった彼は、言ってみれば心理学的な読心術で持って、人々の心に潜む闇を予言してみせたのかも知れません。その的確さこそが“奇跡”であり、ラスプーチンを伝説たらしめた才能であったのでしょう。
真意のほどはともかく、ラスプーチンと言う人物はとにもかくにも魅力的で、とても興味を掻き立てられる存在であります。これを読み終わってから、ラスプーチンを題に取った映画、「ロマノフ王朝の最期」を改めて拝見してみました。
当初はその凄まじい情報量に圧倒され、ともすれば見逃してしまっていた場面の数々は、ラスプーチン伝説にまつわるエピソードを紡いだモザイク画であり、ひいてはそれが革命期における壮大なるタペストリーとして浮かび上がって見えた次第。恐るべし、監督エレム・クリモフ!
やはりロシア映画とは、この国の歴史を知ることを伴ってこそ、本当のおもしろさが見えて来ますね。もっともあまり深刻振る必要もないのですが、過去を知っていた方が感情移入できることは確か。
ああ、もっとロシア史を勉強しよっと。特に「兵器」についてね。ロシアは伝統的に“本物”を借りて映画を撮影しているので、かなりつまらない作品でも、登場する戦車や戦闘機のディテールのかっこ良さだけで充分楽しめますから!

@ちぇっそ@